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サミール・アルール駐日モロッコ大使を招き第136回FEC国際問題懇談会を開催

モロッコ 国際問題懇談会

2010年05月17日更新

日本-モロッコ関係の現状と今後の展望をテーマに講演

講演するアルール駐日モロッコ大使

講演するアルール駐日モロッコ大使

第136回FEC国際問題懇談会の開催風景

第136回FEC国際問題懇談会の開催風景

とき

平成22年(2010)5月17日(月)12時〜14時

ところ

帝国ホテル東京「なだ万」

概要

平成22年5月17日(月)にサミール・アルール駐日モロッコ大使を招き第136回FEC国際問題懇談会を開催

内容

民間外交推進協会(FEC)は5月17日、サミール・アルール駐日モロッコ大使を帝国ホテル東京に招き、第136回国際問題懇談会・昼食会を開催した。日本とモロッコは経済、文化協力を中心に伝統的に良好な関係にあり、FECは本年3月にマアスーシ・モロッコ貿易次官来日時にFEC役員等との朝食懇談会を実施している。開会に際して片倉邦雄日・中東文化経済委員会委員長代行・元駐エジプト大使が、「アルール大使は2度目の日本駐在で知日・親日派。5年前モロッコを訪問したが素晴らしい観光資源に圧倒された。オバマ米大統領はカイロ大学で’モロッコが米国独立後の最初の承認国’と講演、感銘を受けた。自由な意見交換で両国関係発展の示唆をいただきたい」と挨拶。アルール駐日モロッコ大使は、「日本・モロッコ関係の今後の展望」をテーマに講話を行った。FECから岡崎真雄ニッセイ同和損害保険(株)名誉会長、米澤泰治米澤化学(株)取締役社長、ハンスユーゲン・マルクス(学)南山学園理事長、小林哲也(株)帝国ホテル取締役社長らが出席した。アルール駐日モロッコ大使の講話に続き、出席者と一問一答の形で昼食会は和やかに行われた。

講演要旨

モロッコと日本の関係は古く良好だ。14世紀にモロッコの探検家が日本を訪問し、1838年日本はカサブランカに領事館を開設した。1928年モロッコは日本に燐を輸出開始した。政府、議員、皇室、民間の交流も良好で06年に国交50周年を祝った。日本の経済協力と、住友電工、矢崎総業、YKK、商社各社等の進出に感謝する。日本はひらめきの源で、文化、観光、学術・大学交流も増加している。筑波大学との交流に感謝している。アジア最大のパートナーの日本からアジア情報を入手し、当国はアラブ、アフリカ情報を提供したい。日本の国連安保理常任理事国入りを支持する。中東和平問題での協力、TICAD(アフリカ開発会議)における日本の指導的役割、アフリカ南南協力推進のための日モロッコ三角技術協力。教育、人材開発、技術指導の協力に感謝する。環境対策への取組みについて「鳩山イニシアチブ」の推進に期待する。日建設計の環境技術は高く、環境PJの指導力は素晴らしい。アフリカ、アラブ各国は日本の太陽光発電、風力発電技術等再生利用エネルギー開発の進展を注視している。欧州、中東、アフリカの結節点に位置するモロッコは、日本の投資の橋渡し役になれる。米国と最初に国交を開き、5年前にFTAを締結した。EUともFTA締結を目指す。85年に日本と漁業協定を結んだが、他に結んだのはEU、ロシアだけだ。

懇談・意見交換

本間克巳(株)ジーアンドエイチ代表取締役:観光で2度訪問した。別荘開発が目にとまったが外国人の投資も可能か。動物病院は設立可能か。

アルール大使:不動産投資の内外投資家の差別はない。我々は馬、犬、駱駝と仲良く生活してきた。動物病院を紹介したい。

マルクス(学)南山学園理事長:14世紀以来の両国交流を詳しく教えて欲しい。

アルール大使:14世紀に旅行家バットゥータが日本でカラスを見て驚き旅行記に記した。19世紀には岩倉使節団の来訪があり、明治維新に関心をもち、近代化を急いだが多額の外国借款から財政破綻の危機に陥った。

マルクス(学)南山学園理事長:日本は「千夜一夜物語」に黄金の国として登場する。アラビア文化に日本はどの位意識されているのか。

アルール大使:ペルシャを中心に何世紀もシルクロードや東方への関心が強かった。5世紀前からポルトガルがアジア、日本を意識し、長崎、横浜を開港させた。当国も似た状況で、タンジール港が古くから開かれ米国が領事館を開設した。

片倉邦雄元駐エジプト大使:モロッコが米国を最初に承認した理由は何か。

アルール大使:当時モロッコは広大なモーリタニア帝国でムーア人の国と呼ばれた。外交の歴史は千年以上ある。オランダとは500年、ポルトガルとは240年の国交の歴史がある。

小林哲也(株)帝国ホテル取締役社長:8年前にマラケシュを訪問した。日本の観光客数はどの位か。スペインからホーバークラフトで30分で行けるのは本当か。

アルール大使:モロッコ観光の魅力は都市と砂漠。マラケシュは富裕層を魅了してきた。日本人観光客は欧州内からも含め年間3万人。2010年の観光客数は1千万人が目標。ジブラルタルから20分で来られる。

武居信男日蘭協会理事:モロッコを含め北アフリカ3カ国はEU経済圏の一部とも見られる。将来はどうなるのか。

アルール大使:モロッコはアフリカ、アラブの国だが、欧州の経済発展をモデルとし、政策面も緊密だ。EUの’advanced statute’という地位で、政治機構以外ではEUと同等の活動をしている。ウクライナも同様の地位だが、彼らは欧州だ。当国は地中海両岸の諸国と良好な関係にあり、地中海同盟の検討を進めている。

田丸 周FEC常任参与:EU加盟を目指さないのがトルコとの相違点か。地中海の安全保障上の懸念点は何か。

アルール大使:不法移民、テロのリスクは他国同様にある。

山田洋暉(株)クラレ監査役:日本からの投資について、法制面、税制のメリットはあるか。

アルール大使:欧州投資に比べ投資コストが安い。中東、欧州を結ぶハブ拠点の魅力がある。タンジールはアフリカ最大の港。自由貿易地域で免税措置があり生活インフラも良好。欧州各都市へ36時間以内のトラック輸送が可能であり、欧州向け物流拠点として最適だ。輸送費節減により欧州市場で中国製品に対して優位となれる。多額投資には土地、雇用面等のインセンンティブがある。

最上猛夫(株)アンジュロセック専務取締役:日本企業向きの官民PJ(PPP)はあるか。

アルール大使:JICA事務所もあり、下水道・給水関係、化学、再生可能エネルギー等多くのPJがある。

米澤泰治米澤化学(株)取締役社長:水資源について不安はないか。西サハラ独立運動は政治不安となるか。

アルール大使:降水量は地域差あるが、今年は50以上のダムの貯水量は満杯。降雪量も多かった。日本の貯水管理、循環技術協力に感謝している。西サハラの一部に自治権を与えるか歴史的争点であり、国連安保理で議論をしている。

(田丸周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)

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