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第86回FEC国際問題懇談会(略称・FEC国問懇)

国際問題懇談会

2007年10月19日更新

「FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)と企業活動への影響」をテーマに(ゲストスピーカー・渡邊頼純慶応義塾大学教授を招いて)

ゲストスピーカーの渡邊頼純慶応義塾大学教授

ゲストスピーカーの渡邊頼純慶応義塾大学教授

とき

平成19年(2007)10月19日(火) 12時〜14時

ところ

ホテルオークラ東京・本館11階スターライト「特別室」

概要

渡邊頼純慶大教授を招いて第86回FEC国際問題懇談会を開催

内容

昼食懇談会、講演と質疑応答

概 要

 FEC民間外交推進協会(金川千尋会長)は10月19日渡邊頼純慶応義塾大学教授を招き、ホテルオークラ東京で第86回国際問題懇談会を開催した。懇談会には、FEC副会長の岡崎真雄ニッセイ同和損保(株)名誉会長、同副会長の田中宏(株)クレハ会長ら役員はじめ、法人会員ら多数が出席した。
 開会に際して埴岡副理事長より、「渡邊教授は国際機関、外務省での通商問題の実務経験が豊富な、日本のFTA・EPA分野の第1人者。日本企業の恩恵も多いテーマで活発な勉強会にしていただきたい」と、講師紹介と主催者挨拶を行った。渡邊教授より「FTA・EPAと企業活動への影響」をテーマにFTA・EPAの現状、他国の動向、日本の戦略と課題、などを中心に講演し、講演後は出席者と活発な議論がかわされた。

講演要旨

 日本は従来多国間の枠組みで貿易・投資の自由化を推進してきたが、近年地域統合が活発化し、日本もWTOの補完として特定の地域とのFTAに踏み出した。日本の方針は、「東アジア中心にサービス・人の移動・知財競争・ビジネス環境整備を含む包括的なEPAの推進」だ。中国はモノの貿易中心にFTAを「中国脅威」の緩和策に使っている。米国はECに刺激され米州域内でNAFTAを締結し、EUのFTAは域外関係強化手だ。韓国は4月に韓米FTAを締結、EUとも交渉を開始し、日・EU共同研究開始の契機となった。ASEANは工業品が高関税で日韓EUの「草刈場」となっている。
 日本のFTA戦略は、(1)WTOの補完、(2)外交ツール、(3)国内経済改革・規制緩和の刺激剤、(4)資源エネルギーの確保だ。東アジアを中心にこれまで日本のEPAは署名済8本、交渉中6本で、日本の貿易の34%を占める。東アジア域内貿易比率はNAFTAを抜き、EUに迫る上昇を示した。
 交渉上の教訓・課題は、(1)民間主導、政治的意思の後押しが必要、(2)ネガティブ・リスト(規制品目)で交渉開始、(3)対途上国には「持ち出し」も覚悟、等だ。日本の東アジアEPA構想は16カ国を対象に高付加価値産業の域内分業促進を目的とする。中国は「ASEAN+日中韓」に軸足がある。2007年中に各国とASEANとのFTA(「ASEAN+1」)が概ね締結予定だ。 EU(貿易比率13%)、米国(同18%)とのEPAは検討中だが対中国(同17%)は議論が低調だ。
日本のEPAは、東アジアの日本企業主導の「事実上の統合」に法的枠組みを被せ、ビジネスの安定性向上に効果がある。今後は、資源エネルギー、食糧等の持続的供給確保を意図した「総合安全保障政策」の役割も重要だ。

懇談・質疑応答

 質疑応答は昼食をともに田丸周FEC常任参与の進行で次の通り行われた。
法亢堯次フジサンケイ・コミュニケーションズインターナショナル代表取締役会長:
一国のネガティブリストの背景は多様で重要だ。諸外国の例を教えて欲しい。
渡邊教授:タイとの交渉時日本はコメで、タイは自動車部品。米EU間では、夫々外国作品を制限している映画・ビデオ等。
田中宏クレハ取締役会長:食糧自給率をコメのカロリーだけで見るべきではない。野菜もある。コメの輸入規制は消費者を無視した生産者寄りの政策と思うが。
渡邊教授:日本農業は競争的にしなかったため後継者不足となっている。農民一人当りへの補助金額はノルウエー、スイスに次ぐ世界3位の高さだ。自由化して輸入米が増えてもコメ文化はなくならないと思う。
田丸周FEC常任参与・リケン常勤監査役:コピー問題に悩む日本企業は欧米よりも中国EPAを期待している。豪州が踏み切った「市場経済国認定」問題が日本政府のネックか。
渡邊教授:日中政府間協議で知財権等交渉材料は既に話し合われている。民間の熱意が高まり政治家の後押しがあればEPA交渉は現実化しよう。協定雛型も日本は多くもつが中国は貧弱だ。豪中FTA交渉も、アプローチの差(豪州のポジ対中国のネガ(自動車・電機守る))で豪州は悩んでいる。
山口栄一日本航空インターナショナル執行役員法人センター長:
航空業界もEPAのビジネス拡大効果を期待している。羽田空港に外国資本が入ったが、安全保障の観点からも自由化と規制を考えるべきか。
渡邊教授:EPA効果は信頼関係に法的拘束力が加わるため、政権交代あってもビジネスの法的側面が維持され確実性が高まる。ユ〜ティリティ・サービスも総合安全保障の観点から規制と自由化のバランスをとる必要があろう。
瀬下猛双日渉外担当課長:2国間のFTA・EPAが進むとWTOとの関係はどうなるのか。
渡邊教授:ロシア等20カ国以上がWTO加盟を希望しており、WTOの「市場アクセス」と「紛争処理」機能の存在意義は消えまい。但しWTOで制定できない新しいルール作りをFTA・EPAに導入する動きがある。
田中宏クレハ取締役会長:無差別原則のWTOの枠内でFTAを自由に締結できるのか。
渡邊教授:ガット24条に、(1)すべての貿易を対象に、(2)妥当な期間(10年)に関税同盟化を、(3)域外国に対する関税引上げの禁止、と無差別原則の例外となる自由貿易協定に一定の要件が規定されている。農業をはずすのはWTO違反だが中国は途上国故拘束されない。

(田丸周FEC常任参与・(株)リケン常勤監査役・記)

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