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第8次FECベトナム訪問団報告会・解団式を開催

ベトナム 日越文化経済委員会

2014年03月28日更新

報告をする中垣喜彦第8次FECベトナム訪問団団長

報告をする中垣喜彦第8次FECベトナム訪問団団長

報告会の開催風景

報告会の開催風景

とき

平成26年(2014)1月15日(水)16時〜18時

ところ

如水会館「富士の間」(報告会)/「けやきの間」(解団式)

内容

 FECは1月15日、如水会館にて昨年11月19日から11月27日にベトナムへ派遣した第8次FECベトナム訪問団の報告会を開催した。

 報告会で松澤建FEC理事長が「中垣団長が事前にリサーチをしてまとめられたペーパーが皆様のお手元にある。昨年、12月13日にズン・ベトナム首相と面会をした際にこのペーパーのベトナム語版を首相に手渡ししたところ、とても喜ばれていた。」と挨拶。

 来賓の岩本桂一外務省アジア大洋州局南部アジア部南東アジア第一課長から、「昨年は安倍総理がASEAN全10ヶ国を訪問するなどASEANとの外交関係が促進された一年であった。その締めくくりが12月に東京で開催された日アセアン特別首脳会議であり、ベトナムのズン首相も来日された。ベトナムに対し日本政府として、経済面では工業化戦略をもとにインフラ整備をはじめ、様々な分野で協力を行っていく。12月の会談では、合計5件、総額1,000億の円借款の供与の表明を行った。また環境分野での協力を深めていくため、両国の環境省の間で覚書が締結された。海洋安全保障において、今回はベトナム側から要請のあった巡視船艇等の供与に向けても協議がなされた。人材育成協力の一つとして日越大学の設立に向けても話を進めている。今年は3月中旬にサン国家主席が国賓として来日されるが、国家主席の訪日が順調にいくよう皆様に引き続きご協力をお願いしたい。」と挨拶があった。

 続いて中垣喜彦団長より、団長自身が訪問前に書かれた「ベトナムミッションの基本的視座について」というペーパーを基に、訪問を通じての結果報告がなされた。


【中垣団長の報告】



 ベトナム経済の現状分析や持続的成長に向けたベトナムの課題に関して「ベトナムミッションの基本的視座について」というペーパーを作成し、今回の訪問に臨んだ。これにより、サン国家主席をはじめ閣僚等との面会時、冒頭から各分野においてあるべき政策をぶつけることが出来た。

 高い成長率を見せたベトナム経済は、この4,5年間で問題が生じた。輸入が増え、ドン〜ドルレートも次第に下がり、貿易収支が赤字になり、物価が上昇、銀行の不良債権が大量に発生した。政府が様々な対策を講じていることは理解出来たが、再び悪い結果を招かないためにどうすればよいのか、我々が考える上で重要なことである。

 現在、ベトナム経済は踊り場にある。ベトナムの現状を分析すると、行政側の様々な問題に党が関与し、行政と党の間で激しい議論が行われているが、行政はスキャンダルが多いため、党が抑制を利かせるべきであり、今後は党を中心として、行政と国会の3つが一体性を持つよう望む。輸入依存体質や地場の自立・裾野産業の未発達、産業・経済構造上の是正がまだ進んでいない。2015年に迫るASEAN域内自由化までに解決することが望ましく、今後どのように対応するかが喫緊の課題だ。

 農業がベトナム経済の中で大きな支えとなっていることをようやくベトナム政府や関係者も認識してきたとの印象がある。2011年にFEC訪問団でベトナムを訪問した際から、私は自立産業を考える上で農業以外の選択肢はなく、国造りの柱にするべきだと伝えてきている。農業から工・商業への労働力の移行は進んでおらず、GDPに対する農水産物の生産率は20%以下と低い。ベトナムは世界第一位の米輸出国になりつつあり、付加価値を付けて更に競争力を深めていくことが重要だ。
 現地の日本商工会とも話をしたが、賃金は上昇しているようだ。安い賃金を理由に進出した日本企業の中には、当初の思惑とずれ、失望感を感じる企業があることも理解出来るが、途上国において、賃金の自然な上昇はやむを得ないという点を認識しなければならない。

 2013年にベトナムの経済・社会的特性に即して、自動車産業を含む6つの重点分野がリストアップされたが、まだ具体的な政策の進め方については準備が出来ていないと思われる。ベトナム側の希望で自動車産業を重点分野に追加したことは正しいと思う。自動車産業は部品の製造を主とする優秀な下請け産業で支えられている。下請け企業をベトナムと合弁で多く作ることもいいのではないか。

 学校組織の改革も必要。農業分野においては、農業マネジメントの力がなく、リーダーも不足しているため、農業学校や専門学校の設立の必要性を感じる。また義務教育について、体育や音楽、図工といった学科が削られていることは問題である。設備や先生も足りず、日本語学校の数も足りない。

 ベトナムは国民の素質からいってもASEANのリーダーになり得る国であり、多様な感性を持っているからこそ、その可能性は更に広がる。義務教育でのハンディキャップ除去に日本のODAが活用出来るといい。

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