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第14次FEC欧州経済事情等調査団が各国で国賓待遇の歓迎を受ける

日欧文化経済委員会

2007年09月20日更新

フィンランド、ラトビア、リトアニアで大統領、首相、外相、経済相ら政府要人、経済団体役員らと会談する。

とき

平成19年(2007)9月13日(木)〜20日(木) 8日間

ところ

フィンランド(ヘルシンキ)、ラトビア(リガ)、リトアニア(ビリニュス)、ドイツ(フランクフルト)

概要

第14次欧州経済事情等調査団が各国で国賓待遇の歓迎を受ける

内容

目 的



 日本の外交指針は日米関係の強化にある。しかし国際社会においてわが国の存在感を高めるためには日米間よりも共通点が多くある日欧関係であり、そのためには日欧間の経済、文化交流を促進することが重要で、その一環として毎年一回EU・欧州域内の各国に経済事情等調査団を派遣し各国の官民関係者との意見交換を行なう。


概 要


 今次調査団は本年5月に天皇皇后両陛下がバルト3カ国を訪問されて以来の日本からの本格的な経済事情等調査団のラトビア・リトアニア訪問となり、ラトビア・リガ市内の中心地にある独立記念塔では献花式を執り行った。式にはラトビア政府の儀典長らが同行した。帰途ドイツ・フランクフルト市内のホテルでの金融・経済セミナーを開催する。


第14次FEC欧州経済事情等調査団の各国政府首脳との会談要旨

ヴァンハネン・フィンランド首相との会談(9月14日10時〜10時30分)

 高齢化社会問題は、日本と共通する問題。昨年の小泉首相のフィンランド訪問にあたってもこの問題について長く話した。とくに介護問題、生産性を向上され、サービス部門を強化し、システム全体を改善して行くことが必要。とくに在宅介護を重視しており、75歳以上の90%を在宅で介護している。

 森林産業はフィンランドの基幹産業であり、中核である。森林ノウハウは製紙に限らず、種々の特殊製品の開発に力を入れている。

 EUについては、小国の影響力を確保するため、加盟国政府間の協調(大国に支配され易い)よりもEU機関の強化にフィンランドとしては力点を置いている。今後はまずクロアチアが、次いで他のバルカン諸国が加入するだろう。トルコについては、同国がイスラム化の方向へ向かうことは好ましくないことから、EUのクライテリアを充たせば加盟を認めるべしとの立場。

 ロシアとの関係には、「フィンランド」はEUとしての共通政策の形成に努力、色々むずかしい問題はあるが、改善の方向へ向かっていると認識。エネルギーの供給源の多角化の努力は必要だが、ロシアとしても顧客を必要としており、利害が共通している面もあるので過度に心配する必要はない。


ペッカリネン・フィンランド商工大臣との会談(9月14日12時15分〜12時45分)


ペッカリネン・フィンランド商工大臣(写真中央)

 ○ 地球温暖化問題

(1) エネルギー利用の高率化(節約)と(2)再生可能エネルギーのシェア拡大の両面からアプローチしている。

 (1)の施策としては電気製品の省エネクリーン発電を奨励。(2)については、原発の新設(現在の4基を5基に、使用済燃料の地下廃棄を新設)とバイオエネルギー、風力発電の増設で対応。フィンランドは、EUの中で唯一原発を進める国。地方自治体は競って原発誘致に動いている。核廃棄物貯蔵の土地も問題なし。バイオは、バイオディーゼルの交通部門での利用拡大とエタノールの利用拡大。これらはいずれもコストが大きいため短期的には競争力を低下させる。

 ○ 雇用、労働市場の問題

 今後、労働人口が10万人減る見通し、高齢化によって労働市場全体としては労働力の供給が減少し、需要が増加するが、セクター毎に異なる。

  供給を増やすため、2020年までに65歳以上のこようを35万人ふやす。

  将来のGDPを高めるためには、生産性向上が不可欠、そのためにはR&Dの投資拡大が必要。あわせて労働市場の柔軟性を高めるための教育の充実、就業あっせんの強化、セーフティーネットの強化も不可欠。これが国民的コンセンサスとなっている。


本田駐フィンランド日本大使主催の夕食会(9月14日15時〜16時、大使公邸にて)


本田駐フィンランド大使主催夕食会(大使公邸)

 91年のソ連崩壊によって最大の市場を失って不況。それを(1)技術革新、(2)教育と人材育成、(3)R&D予算の重点配分によって乗り切って今日のフィンランド

 高い教育レベルの背景となるのは、(1)教師の質の高さ(教師への社会的尊敬の念、よい人材が来る)、 教師自身による自己批判と反省の繰り返しにより改善を図る、(3)少人数クラスの実現(20人以下)、(4)自由放任主義(子供が自分で気づくのを待つ)

 いわゆるフィンランド・システム(フィンアンド社会の原点)

(1) 国が小さいことから、一人一人の人材を大切に(教育面、女性の活用etc)

(2) 個人の自立を重視(教育においても、高齢化介護でも)

(3) オールフィンランドの発想。(国民的コンセンサス)官民産学等の協調

(4) 外国語教育の徹底

 フィンランド外交(EUの一員であることが第一)

 ロシア(経済依存度が高い)との良好関係、EUとロシアとの橋渡しの役割(EUとロシアでのバルト海汚染対策)、ロシアとは、協調関係以外に選択肢なし、ロシアをいかに国際社会に取り込むか、EU加盟により対ロ外交上の強力な後ろ盾を得た。

 内政上の問題

(1) 少子高齢化による労働力不足

対策としては、国内的には定年延長(63歳〜68歳の間で各自が選択)と労働市場の柔軟性強化。対外的には移民の導入。新EUメンバーからは殆ど制限なし。

(2) 高齢化社会と国際競争力の両立

  セーフティーネットの強化拡充で、国際競争力は強化されるというのが国民的コンセンサス


久保駐ラトビア臨時代理大使を招き朝食懇談会(9月16日8時〜9時 ホテルにて)

 ラトビア側の日本への期待は高いと思われるが、先方から日本へ具体的に何を期待しているのか? 日本からの投資や技術移転を期待しているのかもしれないがどういう分野での投資を期待しているのか? 物流拠点としてのインフラ整備が、加工貿易基地として対EU市場へ向けた製造工場か? 投資誘致のための優遇策や、投資のメリットは何か?

 東欧やBRIC’sを対象とした投信は盛んだが、それにバルト諸国も含まれているが、具体的投資対象がはっきりしないというのが現状。これを明確に示してもらうことができれば、日本からの資金も入って来る可能性あり。

 ラトビア側を政策や、優遇措置、分野別プライオリティーを日本の経済界に明らかにすることが重要。そのための広報活動をラトビア側が行うのであればFECとしても場を提供する用意あり。


Magonisラトビア鉄道公社会長らとの会談(9月16日10時〜10時50分)

 鉄道公社は100%政府資本,従業員1.5万人。ラトビアのGDPの10%はTransit事業。内70%は鉄道公社によるもの。主たる事業はリガとその他の2つの不凍港からロシア、ベラルーシへの東西の貨物輸送が中心。しかし、EU加盟後は、北欧及びバルト海沿岸からウクライナ、ポーランド、黒海沿岸という南北のTransitも増加している。しかし、最近はロシアがフィンランド湾の自国の港湾の整備して、ラトビアを通らない新しいルートも開発しており、そちらへのシフトも見られる。しかしCapacityがラトビア経由よりはるかに小さく、ロシアからの欧州への貨物量は年々飛躍的に増大しているので、ラトビアへの影響は小さい。さらにロシアを通ってカザフスタン、極く最近では中国までの新鉄道も完成して、需要は大きく拡大中。EUからは、2002〜2007年、2008〜2012の両中期予算から年40億ユーロの構造改革基金からの援助を得ており、道路新設、線路補修、信号システム整備、中継点のコンテナヤードの整備を行っている。


マルシヤンス・ラトビア運輸省副大臣との会談(9月16日11時15分〜12時15分)

 リガ空港の利用者数は、2004年の106万人から3年間で今年は350万人に増加の見込み。さらには2010年に600万、2015年には1000万を見込んで滑走路の拡張(44メートル2本)と年間2000万人までの利用を可能とするターミナル拡張工事を計画中。EUの最東端に位置するメリットを生かし、中国、インド、豪州、東アジアといった東方へのバルト地域、スカンジナビアの地域からの旅客のための中継のハブ空港を目指す。リガからの国外への直行便は現在52便で3年前の2倍。空港利用税は2004年に20ユーロから12ユーロに下げてバルト地域では最低。さらに乗客数の多い航空会社には割引率を設けて、最高80%まで割引きを行う。


パブリクス・ラトビア外相主催の歓迎朝食会(9月17日8時30分〜10時)


パブリクス・ラトビア外相主催朝食会(写真左から2番目が外相)

 観光面でも日ラトビア関係の強化を図りたい。そのためには航空路線の整備も必要。現在、米国から中央アジア、コーカサスへの中継地として使われているが、今後はベラルーシ、ウクライナ、モルドヴァへの中継も拡充したい。ラトビアは新車輸入は、昨年前年比53%も増加しており、購買力の上昇は早い。自動車自体の製造はしていないが、部品はポルシェ、ボルボ等に供給しており、造船部品も生産。

 内政上の最大の問題は地方行政改革で580の自治体を90にまとめることをやっているが、抵抗は極めて強い。小中学校の効率化を図る教育改革も必要だが、時間をかけてやって行きたい。とくに理科系の教科の充実が課題。東京にはラトビア開発公社の出先を開設した。投資の他、観光客の誘致や、航空路線の開設にもあたらせたい。


ザトレルス・ラトビア大統領表敬(9月17日10時30分〜10時50分)


ザトレルス・ラトビア大統領(写真中央)

 本年天皇皇后両陛下を初めてお迎えできたことは光栄。ラトビアでは、もともと親日感情が強いが、これを契機に両国民の相互関心と理解がさらに高まり、両国関係が強化されることを望む。

 ラトビアは新EU加盟国として、豊かな土地資源や優秀な人材等多くの可能性を有しているので、日本との間でも色々な形での協力が可能である。

 日本側からラトビアをEUの一角ということで位置づけていただいていることに感謝している。今回のラトビア訪問が実りあるものとなることを祈念。


ストロッツ・ラトビア経済大臣との会談(9月17日11時30分〜12時30分)

 EU加盟後、新しい協力関係が可能となった。ラトビアの高い成長率とバルト海を通じてEUとつながり、ロシアに隣接するという地理的な利点が魅力であり日本企業の投資を歓迎。

 高い成長率、2001年から現在まで年平均8%、昨年は11%、今後も安定した成長が続くことが見込まれる(中期的には6〜8%を予測)

 サービス部門、建設部門の成長がとくに高く、運輸がこれに続く。今後は運輸部門、ロジスティック、バイオ、金融等に重点に投資。法人税はEUの中で最も低く15%。EUの借造基金より年間40億ユーロの援助。

投資開発長官

 ラトビアへの投資のメリット

(1) 地理的、地政学的優位性(対ロ貿易のノウハウ蓄積、ロシア語を話す人材が多い)

(2) 低い税率(法人税15%)

(3) 手続きの迅速さ(投資の申請は2日間内に処理)

(4) 良質の労働力(学生数は千人中56人で欧州第一位)

(5) 金融インフラの発達(金融機関の6%は外国資本)


カルヴィーディス・ラトビア首相表敬(9月17日15時〜15時40分)


カルヴィーテス・ラトビア首相

 ラトビアは、アジアへ強い関心を有している。EUの東端の国としてロシアに接し、ロジスティクスの面でラトビアを拠点として、ロシアを経由したアジアへのアクセスを拡充整備している。中国への鉄道は既に通じており、最近訪中して香港で、コンテナー輸送の一部を鉄道でリガまで持って来てリガ港から他の欧州諸国へ輸送する可能性について話し合って来た。

 日本には、(1)EUへの輸出のための生産拠点、ロシア市場へ向けての生産ないし中継拠点という2つの可能性を提供できる。この面での日本の投資を期待したい。

 ラトビアは独立以来急速な成長を維持して来たが、問題は高いインフレ率、現在は10%に近いが、2002年は2%であり、このレベルまで今後3〜4年のうちに戻したい。ユーロへの加盟はその後になるので、2012年か2013年頃となろう。ユーロ加盟のための他の2つの条件はすでに充たしている。

 産業政策の重点はサービス部門で、金融、運輸、ロジスティクスでGDPの70%を占めている。第一次産業は林業が最大。EUへの国民感情は極めて前向きで、新条約も合意されれば年末までには批准が可能。


リガ港湾局長との会談(9月17日16時15分〜17時15分)

 リガはシベリア鉄道の延長線上であると同時に南北輸送の中心。日本からは、船では32日〜35日かかるが鉄道では14日。ロシアから見て、リガは最短のバルト海への出口。ラトビアの3つの港湾を併せて6000万トンの荷揚可能量。

 リガ港の荷揚可能量は4500万トン/年だが、2006年の実際の荷揚量は2540万トンで利用率は54%。今後まだ大きな余裕あり。さらに港湾区域内に858ヘクタールの未利用地があり、今後の拡大の余地は大きい。水深は12メートル、コンテナードックは11メートル。2006年の取扱量の61%はdry bulk、20%が石油、19%はコンテナー。港湾地区の経済特区では、2017年までの措置として法人税は80%まで、固定資産税、VAT、関税は100%まで免除。


ユーシス・リトアニア外務次官との会談(9月18日9時〜10時)

 日・リトアニア関係は政治・経済の面ではこれまでも緊密。今後は経済面での関係も強化したい。二重課税防止、投資促進の協定を望む。

 リトアニアの地理的優位性に着目してほしい。スカンジナビア・ドイツを含むバルト海地域は統一された経済圏。(旧ソ連の一部だったためロシアについてのノウハウあり。西欧諸国もこのメリットを利用している)

 2001年以来経済成長は目覚ましく、年率8%で成長してきたが、これからは若干スピードダウンの可能性あり。そのネックは労働力不足。

 エネルギーは全面的にロシアに依存。原発は国内に現在あるが安全性に問題あり、EU加入の条件として2009年中に閉鎖される。これにかわる新しい原発を2015年頃までに当国内に建設。これによりバルト3カ国とポーランドの需要に当てる。

 明年1月からシェンゲン条約に加入。

(注)予定していたヴァイティエクーナス外相が急な海外出張となり外務次官に変更となった。


キルキラス・リトアニア首相との会談(9月18日10時〜10時45分)


キルキラス・リトアニア首相

 リトアニアはEUの中でも高成長率(2001年末8%で成長。税負担もEUの中でルーマニアに次いで低い。(GDPの29%、EU平均は40%)

 道路インフラもバルト3カ国の中では最もよくクライペタ港はバルト最良の不凍港。ロシアの経済特区となっているカリーニングラードに隣接することから、カリーニングラードからリトアニアを通ってロシアに入るルートは対ロ貿易上最も良いルート。

  外国からの投資を期待する分野としては、IT,バイオ,薬品,エレクトロニスクetc.

 原子力は、EU内でも温暖化対策の見地からもまた見直されつつある。リトアニアは、現在までも原発を行っていたが、安全上の問題から2009年中に閉鎖。新たに他のバルト諸国及びポーランドと共同でリトアニア国内に300万KWの原発を2015年頃までに新設。エネルギーセキュリティーの見地からもリトアニアとしては力を入れている。その間の6年間は、ロシア、ウクライナからの供給と国内の水力発電の増量、フィンランドからの電力輸入で補う。

 ユーロへの加盟は当初昨年を予定していたが、インフレ率がユーロの基準をクリアーできず、2010年頃になる見込み。


アダムクス・リトアニア大統領表敬(9月18日11時〜11時30分)


アダムクス・リトアニア大統領(写真中央)

 5月の両陛下訪問は強い印象を受けた。これを契機に両国関係がさらに強化、発展することを望む

 これまでも教育や文化の面では日本との関係は強かったが、今後は経済面でも強化したい。

 リトアニアは、バイオ、プラスティクス工業、化学工業等の分野ですすんでおり、日本の投資にとっても多くの可能性があると思う。リトアニアのインフラを十分にstudyして行って欲しい。

 経済関係が遅れているのは、二重課税防止条約がないことも一因と考えており、締結を急ぎたい。
 ラトビアは良き競争相手である。あえて違いをあげれば、ラトビアでは全てがリガに集中しているが、リトアニアは分散している。工業分野でもリトアニアの方が多岐にわたっている。


ヴァシリエンヌ・リトアニア国際貿易課長らが同国の投資政策について説明(9月19日8時〜9時)

 リトアニア貿易の輸出は、60%EU、12.8%ロシア、20%CIS諸国で、品目は、機械、プラスティック、繊維、食品、石油製品etc多岐にわたる。輸入は、ロシアが最大で22%、但し石油が殆ど、スカンディナビア諸国、独、ポーランドのシェアが高い

ワイキャヒチェン同外国投資課長

 リトアニアへの投資のメリットは、(1)EUの一員、バルトの入口、(2)ロシア、アジアへの近接性、(3)高い教育レベル、(4)高い成長率、(5)シェンゲン条約に明年より加入、(6)インフラのよいこと(道路、港湾、ロジスティック、国際空港4つ)、(7)経済特区4カ所

 世銀のビジネス難易度認定では16位。

 EUの対リトアニア投資は70億ユーロ(2006年)、2001年の17億ユーロから4倍増。主たる投資国は、ポーランド、デンマーク、スエーデン、ドイツ。

 日本の投資は6万ユーロ(矢崎総業、インターロジクス、コーエイ)


ドレスナー銀行のエコノミストを招き経済・金融セミナー・夕食会(9月19日16時半〜19時半)

 フランクフルト市内のホテルにおいて夕食会を兼ねての経済・金融セミナーを開催。最近の欧州経済情勢とユーロをテーマに同エコノミストから説明を受ける。サブプライムショックの余波を受けての金融異変の現状や来年のドイツやEUの経済情勢の見通しを聞き夕食をともに質疑応答を行なう。

 花田吉隆駐フランクフルト総領事もセミナー・夕食会に招く(下記の写真右のとおり)





ラトビアのリガ市内の独立記念塔での献花式

ドレスナー銀行エコノミストを招いてのフランクフルト市内のホテルでの金融経済セミナー

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