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ペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学大学院教授を講師に招き第63回FEC中国問題研究会を開催=FEC日中文化経済委員会

中国 日中文化経済委員会

2010年02月15日更新

中国人との接し方をテーマに講演

講演するペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学大学院教授

講演するペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学大学院教授

第63回FEC中国問題研究会の開催風景

第63回FEC中国問題研究会の開催風景

とき

平成22年(2010)2月15日(月)12時〜14時

ところ

帝国ホテル東京「北京」

概要

2月15日ペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学大学院教授を講師にお招きして第63回中国問題研究会を開催した。

内容

民間外交推進協会(FEC)・日中文化経済委員会(委員長生田正治(株)商船三井最高顧問)は2月15日、ペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学大学院教授を招き、「中国人との接し方」をテーマに第63回中国問題研究会を帝国ホテル東京で開催した。研究会には、内藤明人リンナイ(株)取締役会長、岡崎真雄ニッセイ同和損害保険(株)名誉会長、松澤建(学)青山学院理事長、田中宏(株)クレハ取締役会長、渡邊五郎森ビル(株)特別顧問・元三井化学(株)会長、井川俊高大王製紙(株)特別顧問、中嶋洋平日油(株)代表取締役会長、米澤泰治米澤化学(株)取締役社長ら、多数のFEC役員・会員が出席した。

開会に際してFEC副会長の内藤明人リンナイ(株)取締役会長より、「当社は20年以上中国ビジネスを経験しているが、現地では共産党のバックも必要。高成長の中国はチベット、多民族問題等抱える問題も多い。本日は中国人の考え方、行動様式を伺い中国人との付き合い方を学びたい」と主催者代表の挨拶があった。日本国籍のペマ・ギャルポ教授は中国四川省(チベット)生まれで、在日45年のチベット、中国問題の専門家。日本でダライ・ラマ法王のアジア太平洋地区代表を務め、教職歴も長く受賞著書を多数出版している。講演では、長年の中国人、台湾人との交流経験に基づき、中国人の思考、行動等について、オフレコを交えながら率直な見解が述べられ、講演後中華料理をともにして出席者と一問一答の懇談が和やかに行われた。

講演要旨

79年から89年まで日本でダライ・ラマ法王の代表として中国、台湾を担当した。それ以前、中国はチベットとの対話には応じず、亡命チベット人はゲリラ活動しかできなかった。ソ連はアフガン侵入後、「チベットは民族自決の戦い」と言い、中ソ関係の険悪化が中国側の背景にある。台湾とは「敵(中国)の敵(チベット)は味方」の関係から、対話が開始された。ラマ法王は87年に、中国との和平提案として、「中道路線、独立譲歩、高度の自治」を主張し、西側は援護射撃として89年にノーベル平和賞を授与、チベット問題が世界に認知された。

中国にとって歴史、真実は重要ではなく、状況次第で使い分ける。時間感覚にも優れている。80年代に中国の「連邦制移行検討」の情報に対して、チベットは「空理空論だ。米国は話し合いで連邦制となった」と反論すると、中国側は言わなくなった。「騙す」のも中国の知恵、戦術の一つで、特に弱者が強者を騙すことは称賛される。「約束」もインド、中国では状況によって変る。細事でも反論することが重要だ。文革後の79年にチベットが要求した条件に対して中国は、「独立以外は可」と応じたが、92年には3条件の宣言(チベットは中国の一部、独立放棄、台湾・中国は不可分)を我々に要求した。中国では個人の利益が国家利益に優先し面子が重視される。知己を得ると事がうまく運ぶ。自分も交渉相手を一人に絞り会話が進んだ。自分が失敗の原因になることを嫌い、状況が好転すると態度が傲慢になる。資金、世論が現代中国のパワーだ。

懇談・質疑応答

田丸周FEC常任参与:中国の次期国家主席は習近平が有力との説がある。政治情勢は安定したとみられるか。

ペマ・ギャルポ教授:中国全土を支配するのはむずかしい。指導者問題はまだ一波乱あろう。

内藤明人リンナイ(株)取締役会長:客家出身者が各分野で多い。有力者の学歴には清華大学・ハーバードMBSのルートもあると聞いた。

ペマ・ギャルポ教授:中国外では台湾、マレーシア、インドネシアに多い。李登輝、リーカンユーも客家だ。米国留学経験者はブレーンにはなれるが指導者にはなれない。建国に携わった幹部子弟は特別扱いだが、外国との接触が多いと警戒される。

岡崎真雄ニッセイ同和損害保険(株)名誉会長:もし中国がチベットの独立を認めたらどのような影響が考えられるか。

ペマ・ギャルポ教授:当面実現性は薄いが、中印間の不干渉中立地帯としてチベットが独立した場合、中国の軍事費削減やアジアの安全保障に貢献しよう。
田中宏(株)クレハ取締役会長:ラマ法王の方針に不満を持つチベットの若者が暴走する懸念はないか。

ペマ・ギャルポ教授:インドと米国は暴走を支持する覚悟はない。米国、EUには共通のチベット認識があるが、インドは様々な事情を抱え態度が不明確だ。日本のチベット政策はない。

松澤建(学)青山学院理事長:共産党1党独裁体制の中国の政治の民主化の可能性はあるか。

ペマ・ギャルポ教授:共産党自身が民主化すれば軟着陸可能だが、特権階級の存在など国内に不満が多く、すべて難しくなる懸念もある。軍閥もあり海軍、空軍に対して陸軍は冷遇されている。

内藤明人リンナイ(株)取締役会長:日本は大乗仏教と神道の国で外国から評価されており世界に貢献できる。資源国ロシアともうまく付き合い、対米中ロの三面外交が重要だ。

ペマ・ギャルポ教授:日本外交は「従属的」か「優越的」かで、対等の外交ができない。また正直すぎてブラフが言えない。アジアの期待は大きく、すべての国が日本を戦争加害者と責めているわけではない。インドも核保有国で重要だ。

中嶋洋平日油(株)代表取締役会長:「騙す」構造は変らないのか。米オバマ政権に中国通が多いが、チベットはどう見ているのか。

ペマ・ギャルポ教授:教科書でも「賢ければよい」と書かれている。チベットは米共和党の中国戦略を支持するが、議席の多い民主党人権派も支持する。日本も国策としてチベット問題を考えて欲しい。

田丸周FEC常任参与:「竹島は日本の施政が及ばず、日米安保体制下で米国の防衛義務はない」との政府見解には驚いた。

ペマ・ギャルポ教授:シンクタンク等が与党に背景説明をしていない。FECが民主党へ政策提言してはどうか。

渡邊五郎森ビル(株)特別顧問:日本人魂をどう教育すべきかの課題だ。

(田丸周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)

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