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ヨルマ・ユリーン駐日フィンランド大使を招き「フィンランド経済の現状と課題、対日関係」の意見交換=昼食懇談会

フィンランド 日欧文化経済委員会

2007年06月12日更新

FEC日欧文化経済委員会 第67回FEC日欧経済等フォーラム

(講演のヨルマ・ユリーン駐日フィンランド大使)

(講演のヨルマ・ユリーン駐日フィンランド大使)

とき

平成19年(2007)6月12日(火) 12時〜14時

ところ

ホテルオークラ東京・本館11階「スターライト特別室」

概要

駐日フィンランド大使を招き第67回日欧経済等フォーラム。

内容

テーマ

「日本・フィンランド経済・文化交流の促進のあり方」についての意見交換・昼食懇談会

内 容

FEC日欧文化経済委員会(委員長・河野俊二東京海上日動火災保険(株)相談役)は6月12日、ヨルマ・ユリーン駐日フィンランド大使を招き第67回日欧経済等フォーラムをホテルオークラ東京で開催した。開会に際して河野委員長は、「日本とフィンランドの関係は近年、天皇、皇后両陛下のご訪問や両国首脳の相互訪問も相次ぎ関係強化がめざましい。本日は国際的に高く評価されているフィンランドの強さについて興味深いお話を伺いたい」と挨拶。埴岡和正FEC副理事長より、「経済産業分野に強いユリーン大使にフィンランド経済成功の話をお願いする」と大使を紹介した後、ユリーン大使より、「フィンランド経済の現状と課題、対日関係」をテーマに、歴史、国際競争力、ロシア・EUとの関係など、率直な見解が述べられた。その後は昼食をはさんでFEC役員・会員と和やかに意見が交換された。次回は大使館で催すことで合意した。

大使発言要旨

 

フィンランドと日本の間には1つの大国があり問題もあった。フィンランドの面積は「日本マイナス北海道」位で、人口5百万人、18万の湖があり国土の70%が森林だ。六百年間のスエーデン領、108年間のロシア自治大公国を経て1917年に独立した。第2次大戦でソ連に領土を10%失い巨額の賠償金を支払ったが、複数政党制と市場経済、中立的外交政策(NATO非加盟)を維持した。貿易は60%西欧、20%ソ連。95年にEUに加盟し02年北欧唯一のユーロ通貨加盟国となった。

競争力、低汚職度、学力、環境保全などの国際比較でマクロ経済は好調を持続、財政は黒字で政府債務もGDP比40%以下へ低下した。所得格差も小さく最大の課題は7%の高失業率だ。サービス化経済が進展しているが、製造業も情報通信、機械、紙パで世界企業が多い。輸出比率が4割と高い貿易立国だ。経済が成功した原動力は、高質・普遍的な教育、研究開発投資、健全な規制と効率的行政サービス、開放経済、社会モデル(安全網と競争促進策)だ。課題は、高齢化対策、グローバル化対応、福祉と競争力の維持だ。

EU加盟で恩恵もあるが、マクロ政策や教育政策などはEUの協力は少なく独自に必要だ。ユーロ通貨は強くなり投機も抑制されており、フィンランドはメリットを享受している。EU貿易比率は57%だがアジア、米国への多様化も必要だ。

ロシアは資源価格高騰を背景に購買力を増大させており、17年ぶりに最大の貿易相手国になった。自分達の地位向上を意識しており付き合うのがむずかしくなっている。日本企業とフィンランドはロシア西部で協力が可能だ。9月のFEC調査団の当国訪問を歓迎する。

懇談の一部

 

河野: 貴国は教育レベルが高いが、教育政策の権限はどこがもつのか。いじめ問題はあるか。
大使: 教育の成功の背景は、(1)教育政策について政党間合意があり政治問題とはならない、(2)平等、無償、共通カリキュラム、(OECDの評価は低いが)能力別クラスはなし、エリート教育は行なわない、(3)教師は修士号保有義務あり、毎年再訓練され、動機づけが高く、親との距離も近い、(4)学校の裁量が大きく校長が教師を採用するしカリキュラムも策定できる、などだ。いじめもあるが早期に教師が介入し両親へ連絡する。
久米: 教師の社会的評価は高く、待遇も良いのか。
大使: 両親に尊敬され、待遇も高い動機づけを維持するには十分な水準と思う非常に高い給与ではない。新卒者の教師志望熱も高く競争になっている。産学連携も重要で、産業連盟には、中三生徒を年数週間有給で企業派遣する制度がある。
三好: 製紙業界では労使紛争が発生したが、教師の労組の実態はどうか。(三好日本製紙グループ本社会長)
大使: 教師の9割近くは労組に加盟しているが過激ではなく問題となった例はない。
野村: 日本人観光客のために、フィンランド・ヘルシンキを中心にバルト海諸国、サンクトペテルブルグを統合して観光誘致する計画はあるか。(野村全日空最高顧問)
大使: フィンエアは日本・欧州路線で3位のシェアだ。そのような統合計画はないが、ヘルシンキをハブとして各航路の開拓は進めている。
宮脇: 対ロシア領土喪失・賠償金支払について、貴国民の対ロシア感情はどのようなものか。(宮脇RBS証券特別顧問)
大使: 子供の頃から歴史教育で認識している。ロシア人は好きでないが、最大のフィンランド旅行者だ。「戦うことよりも如何に仲良くするかが大切」との認識だ。75年に「欧州の領土問題は平和的解決で」との合意があるが、領土が戻る可能性はないだろう。今日、経済関係においても最大の相手である。
志賀: 高失業の背景は国内産業の空洞化か。格差が問題化しないのは豊かな失業者が多いからか。(志賀ヤンマー専務)
大使: 海外業務委託も一因であるが、失業者の多くは、低学歴・低技能者、高齢者、転勤忌避者で、政府は転勤を促進する施策を検討中だ。ノキアは高付加価値製造は国内、安価モデルは中国など海外との戦略から、後者部門の人員を削り、前者で増加させている。
田丸: 婦人の労働参加が高いフィンランドの高齢化対策の重点は何か。
大使: (1)定年延長と年金受給開始年齢の引上げ・割増化(68才)、(2)大学生への政府補助金短縮(5年半)、(3)建設、病院への移民受入れの大幅緩和だ。
埴岡: 大使に提案ですが、次回続きを貴大使館で行いたいが。
大使: 今日は有意義であった。秋以降昼食会としての催しとし当大使館へ招きたい。

[閉会挨拶:久米邦貞日欧文化経済委員長代行、元駐ドイツ大使]

フィンランドは立派に外交政策を運営し、経済を成功に導かれた。本日の大使の講話に大変感銘した。9月のFEC調査団で貴国を訪問し両国間の関係促進に貢献したい。

(田丸 周FEC常任参与・(株)リケン常勤監査役・記)

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