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垂水健一日中友好協会事務局広報部長を招き第71回FEC中国問題研究会を開催=FEC日中文化経済委員会

中国 日中文化経済委員会

2010年07月01日更新

発展の舵を取る「中国力」の実態をテーマに講演

垂水健一日中友好協会事務局広報部長

垂水健一日中友好協会事務局広報部長

第71回FEC中国問題研究会の開催風景

第71回FEC中国問題研究会の開催風景

とき

平成22年(2010)7月1日(木)12時〜14時

ところ

帝国ホテル東京「北京」

概要

平成22年7月1日(木)に垂水健一日中友好協会事務局広報部長を招き第71回FEC中国問題研究会を開催

内容

民間外交推進協会(FEC)・日中文化経済委員会(委員長・生田正治(株)商船三井最高顧問)は7月1日、元東京新聞論説委員の垂水健一日中友好協会事務局広報部長を招き、「発展の舵を取る「中国力」の実態」をテーマに第77回中国問題研究会を帝国ホテル東京で開催した。研究会には、田代圓東ソー(株)取締役相談役、岩下誠宏(株)ADEKA名誉会長、渡邊五郎森ビル(株)特別顧問、田中宏(株)クレハ相談役、内田勲横河電機(株)取締役会長、米澤泰治米澤化学(株)取締役社長ら、多数のFEC役員、会員が出席した。

開会に際してFEC副会長の生田正治(株)商船三井最高顧問より、「垂水講師は幅広く活躍され、著書も多い。リーマン・ショック後の世界経済は中国依存度が増大しているが、広大な中国の全体像はつかみにくい。経済発展は本物か。中国が覇権主義に走ると大変であるが、自制されるのか」と、主催者代表の挨拶があった。垂水講師は、中国経済の弱さと強さ、西部大開発、高速鉄道計画などを中心に、講演を行った。講演後、中華料理をともにして出席者と一問一答の懇談が和やかに行われた。

講演要旨

中国の政治、行政区分は判りにくい。中国の議会は二院制に近い。立法機関の全国人民代表大会(全人代)と学識経験者や各界代表で構成される全国政治協商会議(政協)がある。政協の政策提案は全人代に影響を及ぼす。市も、「直轄市」「地級市」「県級市」の三段階ある。中国経済の弱さは、インフラの遅れ、人材不足、内需不足。沿海部に比べて西部の発展が遅れており、10年が経過した西部大開発計画においても空港、道路、鉄道建設が推進された。西部大開発構想は、鄧小平の「先富論」と「共同富裕」の考えに基づき、先に豊かになれる沿海部が、遅れた地域を助けて皆が豊かになる、というもの。人材不足については中間管理層不在が指摘される。模倣品が多いのも能力的に本物を作れないからか。製造業とサービス産業の弱さが内需不足の背景。財政支出で景気を刺激している。中国経済の強さは、華人・華僑の深く広い在外ネットワーク。上海の不動産ブームも台湾、香港資本が火をつけた。また、経済・外交政策の形成過程は一本化され外部に漏れないのも強み。中国は14カ国と国境を接しており、国境維持努力は大変で軍事行動は予測がつかない。適切な指導者を欠くと分裂する懸念がある。

中国は沿海地域、中部台頭地域、西部大開発地域、東北振興地域の4つの地域別発展計画を推進している。西部大開発計画では、三峡ダム、重慶の発展のほか、青海省とチベットを結ぶ青蔵鉄道の開通が大きな成果であるが、チベットの俗化と漢民族支配の加速も招いた。中部では省間競争が激しく、山西省、河南省が発展している。東北開発は今後の課題だ。

内需拡大の推進役として高速鉄道建設に注力している。鄧小平はかつて、日本の高速鉄道技術を礼賛したが、日本側は「安全性のためにハードから保守点検技術迄のセット輸出が必要」と返答、中国側は日本からの技術導入を断った経緯がある。中国の鉄道は専ら石炭輸送手段で貨物中心であったが、03年以降、東西南北に4本の旅客専用の高速鉄道網を建設中だ。車両は、日本(川重)、カナダ、ドイツ、フランスの各社の技術協力で製造される。消費はまだ弱く、2040年迄インフラ投資で内需拡大が可能とみている。

懇談・質疑応答

田丸周FEC常任参与:頻発している労働争議の背景は何か。日本企業特有の問題か。欧米経済が変調の今、中国は環境対策等ソフト・パワーの覇権を強める好機ではないか。

垂水健一講師:内需喚起につながる賃上げやストを中国政府が容認しており、日系・外資系企業にその傾向が強い。国内の分裂懸念等内政面に不安を抱え、対外膨張の好機ではあるが行動は抑制的。

生田正治(株)商船三井最高顧問:日本が高度成長期に官民一体で発展したように、中国も政治体制の強みを生かし、米国に並ぶまでは一体的運営を追求しよう。汚職は改善しているか。

垂水健一講師:同感。人材も10年かけて育成する体制だ。汚職は胡錦濤も問題視している。改革開放で官僚・党員の許認可権限が増加したのも一因。

田中宏 (株)クレハ相談役:ネットの言論統制も行っているようだが、民衆の反日態度は変化したか。日本や西欧は共通の価値観をもたない中国に違和感をもつ。内部崩壊の可能性はあるか。

垂水健一講師:小泉首相のような公然と靖国参拝することがなくなれば反発も変わる。温家宝首相は「感情の整理が重要」と云っている。日中は「同文同種」ではない。80年代以降の世代は自由奔放。今後中国をどう変えていくか注目される。

岩下誠宏(株)ADEKA名誉会長:中国事業の最大の懸念点は若者の質だが、農民工を束縛する戸籍法は改善されているのか。

垂水健一講師:教育水準の向上は大きな課題。戸籍法は部分的に緩和され、地方内移動を認めたり、優秀な者は条件(収入、自宅保有等)付で都市移動も可能となっている。

生田正治(株)商船三井最高顧問:25年頃に米中の経済・軍事力が拮抗すると、台湾海峡の緊張が緩和し米第7艦隊の存在意義も減る。台湾は自然に香港、マカオのようになるのではないか。

田地司チッソ(株)執行役員経営企画室長:台湾実効支配の経験のない中国は、いつ頃から「台湾は自国」の意識があるのか。

垂水健一講師:台湾人はミクロネシア系が多い。対中関係は多数が現状を支持。日清戦争後の下関条約で清が台湾を日本に渡して以来、「台湾は中国」の意識をもっている。

永田良一(株)新日本科学代表取締役社長:人口が年3千万人増加する中国の水、食糧問題は解決されるのか。

垂水健一講師:2060年が人口のピークで、大きな課題だ。

(田丸周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)

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