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大西靖前在中国日本大使館経済部参事官を迎えて第39回FEC中国問題研究会

中国 日中文化経済委員会

2006年06月15日更新

概要

FEC日中文化経済委員会は6月15日、東京・パレスホテルに大西靖前在中国日本大使館経済部参事官・現財務省大臣官房企画官を迎えて第39回中国問題研究会を開催した。

内容

 FEC日中文化経済委員会(委員長・出井伸之ソニー(株)最高顧問)は6月15日、東京・パレスホテルに大西靖前在中国日本大使館経済部参事官・現財務省大臣官房企画官を迎えて第39回中国問題研究会を開催した。FEC役員・会員を中心に30名が出席した。斉藤邦彦FEC理事長の「中国は冷静な状況判断が難しい国。大西氏の北京在勤経験を踏まえた正確な知識・情報に期待したい」と開会挨拶の後、大西講師が「中国経済の現状と課題」をテーマに講演し、講演後出席者と活発な質疑がかわされた。
大西靖企画官を招きパレスホテルで第39回中国研究会

[講演趣旨]
胡錦濤ら第4世代の現指導部は、成長一辺倒から全体的な発展へ重点を移し、格差(農村・地域)是正や環境問題等を重視しているが、「本質的には共産党・官僚・資本家の連合政権」との指摘もある。
「第11次5ヵ年計画」(06年3月)では、格差是正等弱者向けスローガンが消え、経済構造改革が全面に出た。「エネルギー効率20%改善」という省エネ目標も注目される。外資誘致策も見直され、外資優遇の法人税も来年までには内外一本化される。
10%成長が続く中国は、投資が消費を上回るいびつな構造だ。過剰投資抑制と消費拡大には、銀行の審査能力向上や、低所得層への所得税分配による高貯蓄率(40%)の引下げが課題である。銀行貸出も昨年から再上昇しており、再利上げや追加的投資抑制策も予想される。
人民元は切上げられた昨年7月以降年1%強の上昇にとどまり、尚20%以上割安だ。当局はドル元の金利差2%を年間の切上げ基準にしている模様。巨額の国際収支黒字に対して、毎月
200億ドルの短期債発行による不胎化政策で市場介入しており、世界1の外貨準備は今年中に1兆ドルに達する見込みだ。ドルと元の固定化により、インフレ高進や衰退産業の温存が懸念される。早晩切上げ幅は拡げられるのではないか。

[質疑応答]
Q 環境規制の実態はどうか。
A 最近の暴動は、「工場排水」と「強制立ち退き」への抗議の2種類で、環境問題は深刻だ。中央政府は地方の実態調査と監督を強化しているが、地方は雇用確保・成長優先で温度差がある。
Q 政治体制の行方、共産党の持続性をどう見るか。
A 党はソ連崩壊を見ており危機感はある。地方の不満を除くと民衆は静かだが、不満が組織的に全国に拡がったら、法輪功を非合法化したように抑え込もう。天安門当時のような政治熱はなく拝金主義が蔓延しており、政治改革は全く音なしの構えだ。

Q 消費喚起策として賃上げ策が採られるのか。
A 都市・農村共に賃金は上昇しており、国民負担軽減(農民税・義務養育費廃止等)や年金制度の充実が図られている。
Q FEC調査団の訪問時に「格差」「社会不安」が問題との声を聞いた。有効な対策はあるのか。
A 民衆向けスローガンが消えたのは奇異であり、今秋にも抜本対策を発表するのではないか。
Q 5ヵ年計画で成長率を7.5%へ下げたのは、国有企業・銀行・地方の癒着を断ち過熱経済を抑制する強い意志表明ではないか。
A 「スローガンの実態はない」との陰口がある。過熱経済の抑制といっても、弱者や中西部・北東部は抑えられないし、上海に皺寄せさせるわけにもいかない。

Q 米国のインフレ、金利上昇から世界的に成長鈍化した場合、中国への影響は。
A 国内市場も拡大しており、中国が世界経済の牽引力となっている面もあり大きな影響はない。
Q 国有企業改革、国有銀行改革の状況はいかに。
A 自動車、資源関連会社は外資導入による民営化が進み利益率も高い。農業銀行を除く4大銀行の不良債権比率は5%以下となり、自己資本比率も国際基準の8%以上になった。株式上場によりガバナンスも強化されよう。
(田丸周FEC常任参与・(株)リケン常勤監査役の議事録に基づく)

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