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田母神俊雄元航空幕僚長を招き第139回FEC国際問題懇談会を開催

国際問題懇談会

2010年07月14日更新

今日本が取り組むべき課題とはをテーマに講演

講演する田母神俊雄元航空幕僚長

講演する田母神俊雄元航空幕僚長

第139回FEC国際問題懇談会の開催風景

第139回FEC国際問題懇談会の開催風景

とき

平成22年(2010)7月14日(水)12時〜14時

ところ

帝国ホテル東京「北京」

概要

平成22年7月14日(水)に田母神俊雄元航空幕僚長を招き第139回FEC国際問題懇談会を開催

内容

 民間外交推進協会(FEC)は7月14日、田母神俊雄元航空幕僚長を帝国ホテル東京に招き、「今日本が取り組むべき課題とは」をテーマに第139回国際問題懇談会・昼食会を開催した。田母神俊雄講師は2008年10月、懸賞論文応募作品の内容が政府見解に反すると問題視され航空幕僚長を更迭され、同年11月航空自衛隊を定年退官した。退官後は講演と執筆活動を活発に行っている。懇談会では田母神俊雄講師より、自衛隊の行動力、米国の対日戦略、防衛戦略などについての持論が述べられ、講話後出席者と、核保有と抑止力、中国の軍事力などを巡り一問一答の意見交換が活発に行われた。FECから渡邊五郎森ビル(株)特別顧問、生田正治(株)商船三井最高顧問、清原武彦(株)産業経済新聞社代表取締役会長、遠藤良治信越化学工業(株)顧問、森元峯夫(株)エスイー代表取締役社長、山田洋暉(株)クラレ監査役、市田行則日本原子力発電(株)相談役ら多数のFEC会員が出席した。 

講演要旨

 世界の軍隊はネガティブ・リストで動くが、自衛隊はポジティブ・リストでしか動けず、国際法で動けない世界で唯一の軍隊。在イラク大使館警備も自衛隊法を改正しないとできない。イラク特措法が必要なのも日本のみ。自衛隊は国際的には立派な軍隊とみられ、他国のように行動しても批判されない。1955年の自民党立党時の綱領に記された「自主憲法の制定と日本国の完全独立」は実現していない。米ソの冷戦構造により、日本が米国側に属しているだけで国の安全が保障されるという大変恵まれた環境があり、憲法改正も自分の国を自分で守る完全独立は忘れられてしまった。冷戦終焉後の91年に米国は戦略計画を見直し、「最大の脅威は日独の経済的脅威」と規定した。日米構造協議が開始され日本は様々な構造改革を要求された。米国経済力の低下とともに米国の抑止力も低下している。米軍は大統領の指令下で2ヶ月間は迅速に行動できるが、以後は議会承認が必要となる。仮に日中が尖閣諸島で衝突した場合、米軍は米本土・国民を犠牲にして島を守るか疑問だ。日本は自分で守るしかないが、国民の防衛意識は低下し現行憲法に満足している。軍事力が均衡し外交力は強化される。

 中国の軍事能力は増大しているが戦力を発揮できる状態ではない。日本は日常的に歴史認識の情報戦争を仕掛けられ負ける。外交交渉でも譲り、靖国参拝等普通の行為ができない。約1%のGDP比防衛費を2%近くまで増額すれば中国に対抗できる。デフレギャップも埋められる。米国は対日情報収集能力をもつが、日本は対同盟国情報を取れていない。国防には軍事バランスとヒューミント(人による情報収集)能力向上が必要だ。秘密交渉は譲歩が大きくなる。日米開戦前のハル・ノートが公表されていたら米国が批判されただろう。日本は情報戦争で負けている。戦争は政府が決断しなければ開戦されない。尖閣諸島や竹島紛争は戦争にはならないが、自衛隊は国際法に基づき行動ができず、北朝鮮の拉致工作船被害が拡大した。ガス田権益、竹島も同様。自衛隊を動かす決意がないので侵犯される。

 F2戦闘機の日米共同開発時、米国は官民合同で、量産段階の日本側技術の無償提供を迫った。玉虫色で決着できたが、教訓として日本も官民一体の体制が必要と痛感した。93年以降日米政府間で年次改革要望書が作成されているが、米国の具体的要望に対して日本の要求は穏当。安全保障面の負い目か。最近米国は日本にミサイル防衛強化を迫っている。反撃力を持たない日本の米軍依存が高まる構図で危険だ。米国の多数派は、在日米軍が日本を守る「ビンの蓋」論で日本の弱体化を希望し、アーミテージのような日本の軍事力増強支持は少数派だが、在日米軍と米政府は日本防衛の決意があるのだろうか。

 一歩ずつ自民党立党時の精神に近づくべきだが、日本の政治家には、中国派、米国派はいるが、日本派が極めて少ない。保守派も米国派が多い。米中への過剰な配慮をやめて、真に国益を追求する日本派の政治家が欲しい。正当な国家観、歴史観なしには世界に尊敬されない。戦後教育も米国の占領政策の影響を受け、個人重点の教育制度となっており問題だ。国家、企業は反個人とされ、多くの指導者が公職を追放され、企業も規制がかけられた。企業が強くなり国民が豊かになる。子ども手当ては国民を甘やかす。自立心、道徳心を取り戻すべきだ。日本の敗戦時、「日本は百年立ち直らない」とチャーチルは云ったが、自立にあと35年もかかるのか。

懇談・意見交換

生田正治(株)商船三井最高顧問:日本の中短距離核戦力保有は抑止力になるのか。集団的自衛権行使が要請され可能となった場合、実戦の心構えはあるのか。

田母神俊雄元航空幕僚長:米国等は日本の核武装に反対だが、軍備力均衡が不要で抑止が成立する。核兵器は使用できない防衛兵器だが、核保有で発言力が増し、大国を目ざせる。実戦の前に実弾訓練が必要だ。隊員の士気は指揮官次第であるが落ちていない。

渡邊五郎森ビル(株)特別顧問:防衛戦略策定はどのようなステップになるのか。

田母神俊雄元航空幕僚長:首相の近くでタスクフォースが長期的に研究する。日本は外国のように秘密に進められない。

遠藤良治信越化学工業(株)顧問:中国の軍事的脅威をどう見るか。

田母神俊雄元航空幕僚長:20年までに4隻、内2隻は原子力の空母保有計画が公表された。日本は海保巡視船が1隻配備されている。米国はレーガン時代に軍拡競争でロシアに勝ったが、日本も長期戦略が必要だ。

田丸 周FEC常任参与:日中経済関係が深化しており、米ソ軍拡時代とは環境が異なる。中国が日本を攻撃する可能性は少ないと思う。日本は「米軍基地を縮小し、自衛隊が引き継ぐ」(69年外交政策大綱)方針。歴代政府の動きは鈍く怠慢だ。

田母神俊雄元航空幕僚長:中国の対日攻撃はないだろうが、官僚をうまく活用し防衛戦略を練るべきだ。「政治主導」となった時から官僚を使いきれていない。

清原武彦(株)産業経済新聞社代表取締役会長:日米関係のスタンス次第で、親米派議員は日本派とも捉えられよう。

田母神俊雄元航空幕僚長:国産初のジェット機(MRJ)開発に反対する米国のロビー活動は大変だった。

森元峯夫(株)エスイー代表取締役社長:中国に対する米国の核の傘はボロ傘だ。秘密裏に英知を働かす必要がある。

田母神俊雄元航空幕僚長:尖閣諸島に対する米国の防衛意思の言質をとる必要がある。

市田行則日本原子力発電(株)相談役:日本人に防衛に対する危機感をどう植えつけたらよいか。

田母神俊雄元航空幕僚長:首相が国民へ定期的にメッセージを送ることか。



(田丸 周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)

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