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竹田圭吾『ニューズウィーク日本版』編集長を講師に招き第23回FEC米国問題研究会を開催=FEC日米文化経済委員会

アメリカ合衆国 日米文化経済委員会

2010年04月20日更新

日米外交の現状と課題=日米同盟の意義の再確認をテーマに講演

講演する竹田圭吾『ニューズウィーク日本版』編集長

講演する竹田圭吾『ニューズウィーク日本版』編集長

第23回FEC米国問題研究会の開催風景

第23回FEC米国問題研究会の開催風景

とき

平成22年(2010)4月20日(火)12時〜14時

ところ

帝国ホテル東京「北京」

概要

平成22年4月20日(火)に竹田圭吾『ニューズウィーク日本版』編集長を講師に招き第23回FEC米国問題研究会を開催

内容

FEC日米文化経済委員会(委員長・徳川恒孝(財)徳川記念財団理事長)は4月20日、竹田圭吾ニューズウィーク日本版編集長を招き、第23回米国問題研究会を帝国ホテル東京で開催した。研究会は、普天間基地移設問題を巡り、米国の鳩山政権に対する不安感が増幅する中で開催され、渡邊五郎FEC日米文化経済委員会副委員長・森ビル(株)特別顧問、齋藤宏(株)みずほコーポレート銀行取締役会長、中嶋洋平日油(株)代表取締役会長、今田潔信越化学工業(株)顧問、神山茂(株)ジャステック取締役会長、米澤泰治米澤化学(株)取締役社長らFEC役員、法人会員が多数出席した。開会に際してFEC副会長の荒木浩東京電力(株)顧問・元会長は、「鳩山首相は普天間基地移設問題の五月末決着を明言したが、オバマ大統領は不信感を募らせている。中国の軍事力増強や北朝鮮問題など不安要因も多く、日米同盟の弱体化はゆるされない状況。竹田講師は、メディア界きっての米国、アジア通。日米外交の現状と課題について、率直なお話しを伺いたい」と主催者挨拶。竹田講師は、日米間の認識相違、目指すべき日米同盟などについて率直な見解を述べた。講演後、普天間問題の行方、中国情勢、日本外交の問題点等を巡り、出席者と熱の入った議論が交わされた。出席者にはニューズウィーク日本版の最新号が配布された。

講演要旨

世界的視点で日米関係を考えるべきだ。普天間基地移設問題は世界規模の米軍再編の一環であり、基地移設は技術的な問題。大幅な変更はありえない。どう決着しようが日米関係に問題は起こらない。日米関係の真の危機は別の所にあり、米国は日本の政治に期待していないことだ。日本は経済以外ではニュース価値がない。ニューズウィークも東京発の記事が少なくなり優秀な記者が派遣されなくなった。北朝鮮問題に関連して、米メディアは共通して「日本の核武装論」を繰り返し報道する。経済大国が非核三原則を守れる筈はない、との発想だ。日米とも相手の認識は凍結されたままでチェックされていない。政治も国民も思考停止状態だ。日本は大国であるのに、米国の考える大国ではない。地政学的思考に欠けるからだ。大国の実態を米国に見せようとしたことがない。対米感情や対米意識を発露せず、「去勢」されたようだ。米兵事故に対して韓国では反米デモが発生するが日本では起こらない。

米国は国益から同盟を形成する。米国の国防計画見直し(QDR)でも日本は重要な同盟国。国内に中間選挙を控え、外交面ではイスラエル関係の悪化等、日米関係の弱体化は認められない事情がある。冷戦終焉後も日本は、親米保守と反米右翼しかいない。中間層が真空の状態から如何に脱却するか。米中、米韓関係を睨みながら日米関係を思考すべき。中国内で人民元の切り上げ合意はまだできていないが、国際協調姿勢の胡錦濤主席は、財政赤字の抑制と人民元切り上げによる内需転換で軟着陸を図るのではないか。習近平ら上海閥の逆襲や路線対立の先鋭化も予想される。米国の対応を視野に入れ日中、日米関係を思考すべきだ。

民主党マニフェストの「率直な対話、対等なパートナー」の表現に米国は好意的で問題はない。日米同盟のベースの理念になろう。太平洋の視点だけで思考すべきでない。インド洋給油問題も、「止めたら米国を怒らせる」という議論が多い。自衛隊の支援内容を検証し判断につなげるべきだ。「当事国だけの利害に立つ同盟は二級、三級品」(藤原帰一東大教授)と思う。温暖化対策も日米が組み1+1=3となる同盟が重要だ。90年比25%CO2削減を目標とする「鳩山イニシアチブ」は米国と相談すべきだった。昨年は、G20、COP15等の国際会議が大失敗した年。米国は中国や南米等の特定の国と話し合い、可能な所から進める戦略をとる。核拡散防止問題も然りで、「核のない世界」では安全保障が効かなくなるという立場だ。北朝鮮問題も同様に考えるべき。日米の二国関係は形骸化しており進化と変化が必要。数年かかろうが政権交代の今が、1+1=3となる同盟を目指す好機だ。

懇談・質疑応答

田丸周FEC常任参与:日本でも米兵問題に対する沖縄県民の怒りが出発点となり、普天間基地移設の契機となった。沖縄は社民党の地盤で、普天間問題の紛糾は連立政権のネジレ現象の現れだ。

竹田講師:程度の差はあるが沖縄の怒りが韓国のような全国ベースの反米感情にならない。

中嶋洋平日油(株)代表取締役会長:日米同盟は日本を守る意味がある。同盟をはずしたら日本はどうなるか自明だ。同盟を変えるきっかけはメディアになるのか。

竹田講師:日本企業の優秀さを否定した外電はない。何故変化しないかについての苛立ちがある。仏紙は「日本の良さが若者を駄目にする」と書いた。完成された国で危機感がなくなる。日本に住んでいると日本の質の高さに気がつかない。

齋藤宏(株)みずほコーポレート銀行取締役会長:日米関係は心配ない。政治が邪魔しなければ経済合理性が効く。国内に幼稚なポピュリズムが形成され、政治改革、構造改革、地方分権など影響されている。メディアも誘導されているが竹田氏だけは違う。ポピュリズム世論が日本の病巣になっている。

竹田講師:子ども手当て、農家の所得補償、郵貯限度額問題等に対する国民の反応は冷静だ。

齋藤宏(株)みずほコーポレート銀行取締役会長:問題点をきちんと指摘すれば大きく振れない。中国の上海閥台頭の影響をどう見るか。

竹田講師:上海閥も軟着陸の必要性を認識しており大きな変動はないだろう。リスクは情報統制と軍管理面だ。どの位情報統制を緩めるべきか中国自身も判っていない。政府と軍の間で危機管理情報が共有されず、統治不能のリスクがある。

今田潔信越化学工業(株)顧問:同盟を捨てる勇気は政治家、外務官僚のどこが持つべきか。

竹田講師:政治家だが、有権者の意識変化も必要。

田丸周FEC常任参与:日本はイラク戦争支持など一貫して米国の没落に加担してきたといえる。日本外交の強みは、麻生外相が提唱した「繁栄の弧(北東アジア、コーカサス、東欧)」ではなく、日本企業が発展を先導した東南アジアにある。米国が弱いインドネシア、マレーシアとも強い関係を持っており米国支援を発揮できる。

竹田講師:英国BBC放送は世界に良い影響を与えている国としてドイツ、日本をあげており外交資産として活用できる。英国でイラク戦争参戦の調査が実施され、ブレア前首相が批判され禊を受けた。日本も自民党が同様の検証をすべきだ。

渡邊五郎森ビル(株)特別顧問:先週、米国大使館でルース駐日大使は「クリティカルな状況」と述べた。普天間問題の落とし所をどう見るか。

竹田講師:技術的問題であり落とし所はない。米国は海兵隊運用面では譲れず、現状維持か当初移転案しか受け入れないのではないか。

中嶋洋平日油(株)代表取締役会長:沖縄県民は怒るのではないか。

竹田講師:国の安全保障に地元合意は関係ない。特殊事情からマニフェストに「県外移設」を書いてしまった。対応の問題だ。

渡邊五郎森ビル(株)特別顧問:日米同盟を捨てる具体的行動ステップはどのように考えられるか。

竹田講師:太平洋外交からの転換だ。温暖化対策も国際合意の前にアジアで考えるべきだ。時間がかかるが原則を考えるのが最初の段階。

(田丸周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)

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