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中村逸郎筑波大学大学院教授をゲストとして招き第91回FECロシア問題研究会・昼食会=「虚構のロシア社会」の開催

ロシア 日露文化経済委員会

2008年03月06日更新

FEC日露文化経済委員会=講師が国民の視点から混乱するロシアの現状と市民生活の厳しい実態を語る

第91回FECロシア問題研究会で立ってあいさつの埴岡副理事長

第91回FECロシア問題研究会で立ってあいさつの埴岡副理事長

ロシア下院の投票用紙を手にロシア社会の現状を説明の中村講師

ロシア下院の投票用紙を手にロシア社会の現状を説明の中村講師

とき

平成20年(2008)3月6日(木) 11時45分〜13時45分

ところ

ホテルオークラ東京・本館

概要

中村逸郎筑波大学大学院教授を招き第91回FECロシア問題研究会を開催。

内容

テーマ

「虚構のロシア社会」=資源高騰もあって経済発展が続くが汚職や腐敗が蔓延し社会が混乱するロシアの市民生活は? 変っていないロシアとは?・ロシア人とは?

内 容

開会に際して埴岡副理事長が主催者あいさつと中村逸郎教授を紹介した。中村講師は前項のテーマに基づき年末・年始に訪露した際にモスクワで友人からもらった先の下院選挙での与党・統一ロシアのPR用のポスターを持参し選挙の実態について説明した後に経済は繁栄するが国民生活は格差が一段と進み厳しいのが現実、その中で選挙でプーチン政権を70%の国民が支持するという複雑なロシア社会について詳しく話した。昼食を挟んでの質疑応答においても一問一問に丁寧に答えた。

概 要

1.講演の主旨

プーチン大統領はチェチェンをはじめとする周辺民族への武力弾圧、さらには敵対勢力への政治的抑圧といった強権政治家としてのイメージが強調されている。もちろん、そのような側面を否定できないが、それだけを見据えるのはプーチン政権下で生じているロシア社会の悲惨な状況を見逃してしまう。

プーチン政権下で経済繁栄が築かれる一方で、社会秩序が緩み、汚職や腐敗が蔓延している。さらに今年1月からは公共料金が2割も値上げされ、人々の生活を圧迫している。しかしそれにもかかわらず、有権者は依然としてプーチン氏に期待している。つまり、繁栄の光が当たらない影の人々までもプーチン氏を支持する政治構造が形成されている。まさにこの点に、ロシア政治の硬直性がある。
2.公務員の増大と汚職の深刻化

プーチン政権下で国家機能の強化を図ったために、たとえば国、地方公務員数は急激に増加している。たとえば1993年には88万2000人だったのにたいして、2006年には155万7000人に達した。13年間に1.76倍に膨らみ、2006年の1年間だけでも7.9パーセントも増加している(もっともロシアの人口に対する連邦政府職員の割合はフランス、イギリス、アメリカ、ドイツよりもかなり低い)。

このような官僚組織の増大は汚職の蔓延を引き起こしており、下記の世論調査の結果からわかるように、「汚職が社会全体に蔓延している」と回答した人が25パーセントに達する。

質問:ロシア現代社会では、どのような人びとが汚職にまみれていると思いますか」
地方自治体関係者        34%

交通取締官           28%

特定できないほど社会全体に蔓延 25%

警察官             27%

連邦政府関係者         20%

大企業家            13%

軍事委員部           13%

学校関係者           13%

裁判所             12%

医療関係者           10%

ショウ・ビジネスと娯楽産業    5%

軍人               4%

連邦議会(上院・下院)議員    3%

商業関係者            3%

マスコミ関係者          2%

政党               2%

回答しない            4%

注、全ロシア世論調査センターがロシア全土で2006年11月に実施。

3.旧ソ連諸国からの不法出稼ぎ労働者の流入

潤沢なオイル・マネーで華やかな表玄関を構えるロシアであるが、その裏で働く1500万人もの旧ソ連出身外国人の存在を指摘したい。かれらは劣悪な労働条件のもとで、建設労働者や清掃作業員(冬季には街中の除雪作業)として働いている。ロシア社会はこうした人びとの労働なしにはもはや成り立たなくなっており、ロシア人たちもまた、かれらの上前をはねる生活に慣れてしまっている。ふつうのロシア人までもが、出稼ぎ労働者から賃金を剥奪しているのである。

 

4.プーチンとメドヴェージェフが紡ぐロシア

メドヴェージェフ第一副首相の正式な大統領就任と同時に、プーチン氏は行政機関を統括する首相に就くことになるだろう。首相の座は大統領とちがって任期がなく、しかも有権者から信任を問われることはない。政権基盤の一つを民衆からの支持に据えているプーチン氏が、今後はいくらか身軽になる。かれの動向を見極めるのが大切である。

ロシア国家の顔としてのメドヴェージェフ氏は当面、プーチン氏の政策を説明する首相報道官のような役回りを演じることになるだろう。本格的な仕事をさせてもらえない、まるで派遣社員のような大統領なのだ。かれが本物の大統領にむけて一歩を踏み出すかどうかの試金石は、出欠を含めた洞爺湖サミットになる。

質問者「わたしに息子が生まれました!!!!!!!!!!!!ヴラジーミル・ヴラジーミロヴィチ(プーチン)、息子はロシアに生まれて幸運だったと思いますか。本当の気持ちだけをおしえてください」。

 

5.質疑応答(一部)

Q. ロシアのバブル経済の現実はどうなのか?
A. 正月に滞在中のモスクワのホテルでは新年パーティーが催されていたが、その会費は一人当たり150万円で200名が参加。パーティー券は即日完売であったという。この種のパーティーやセミナーが沢山開催されている。
Q. ウクライナなど周辺各国から不法就労の労働者がロシアに入国しているが?
A. CIS各国からの外国人労働者は今やロシア社会の底辺を支えており、不法であっても追放することはできない。闇社会が彼らの滞在を合法的に手続きしている。
Q. 国民にとっては大変な格差、汚職等厳しい社会の現実があるが一体どう考えているのか?
A. 今やロシア国民は苦悩の世界に入りつつある。むなしい日々であろう。政権にとって一番恐いのはアナーキーである。

 

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