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ヤリ・グスタフソン駐日フィンランド大使を招き第103回FEC日欧経済等フォーラムを開催=FEC日欧文化経済委員会

フィンランド 日欧文化経済委員会

2010年02月18日更新

日本-フィンランド関係の現状と今後の展望をテーマに講演

講演するヤリ・グスタフソン駐日フィンランド大使

講演するヤリ・グスタフソン駐日フィンランド大使

第103回FEC日欧経済等フォーラムの開催風景

第103回FEC日欧経済等フォーラムの開催風景

とき

平成22年(2010)2月18日(木)12時〜14時

ところ

帝国ホテル東京「なだ万」

概要

2月18日ヤリ・グスタフソン駐日フィンランド大使をお招きして第103回FEC日欧経済等フォーラムを開催した。

内容

民間外交推進協会(FEC)・日欧文化経済委員会(委員長・藤田弘道凸版印刷(株)相談役)は2月18日、ヤリ・グスタフソン駐日フィンランド大使を招き、第103回FEC日欧経済等フォーラム・昼食会を帝国ホテル東京で開催した。フィンランドは大変な親日国であり、両国は昨年修好90周年を迎えた。ソ連崩壊後、90年代から教育、研究開発に重点投資を行い、世界トップクラスの教育、IT立国として評価が高い。先進的な福祉国家で男女平等政策が重視され、女性の社会進出が顕著である。昼食会には、藤田弘道FEC日欧文化経済委員長・凸版印刷(株)相談役、木島輝夫日欧文化経済委員・元駐アルゼンチン大使、都甲岳洋日露文化経済委員長代行・元駐ロシア大使、馬蹄和久阪和興業(株)取締役らが出席した。

開会に際して藤田弘道FEC日欧文化経済委員長・凸版印刷(株)相談役は、「07年にヘルシンキを訪問したFEC調査団は、バンハネン首相以下主要閣僚と面談し有益な意見交換を行った。日本も高齢化社会に向かっており、世界的に高く評価されている貴国の産業政策や教育制度を学ぶ意義は大きい」と挨拶。グスタフソン大使より「フィンランドと日本の関係」をテーマに、政治、観光、ビジネス交流の現状と課題について率直な見解が述べられ、講話後和食をともにして出席者と一問一答の懇談が和やかに行われた。

講演要旨

 

着任して半年だが日本人の高いフィンランド知識に驚いている。北海道でもフィンランド語やフィンランド楽器の演奏を聴いた。日本人の欧州海外旅行先では4大国、オーストリアに次ぐ第6位。昨年外交関係90周年を迎えたが、両国の成熟した関係はビジネス、文化、学術等多様な分野で深まっている。フィンランドの若者は日本の食物、若者カルチャー等文化面の関心が高いが、日本は当国に対して、技術、教育、福祉等の制度面の関心が強い。

日本には多くの友好協会、姉妹都市が設置され、近年活発な首脳交流が行われている。今年は既に副首相・財務相が来日し、今後も閣僚、国会議員の訪日計画がある。3月から日本の3大空港発のフィンランド航空直行便が毎日就航し、日欧直行便数はエア・フランスに次ぐ第2位となる。昨年35万人の日本人がフィンランド航空を利用したが、28万人は他国への乗り継ぎ客で潜在顧客といえる。若い日本女性客が増加している。サンクトペテルスブルグやバルト三国へはヘルシンキ経由が便利だ。

両国貿易は増加の余地がある。日本市場はコスト高と競争が激しく、林業、製紙機械、化学、情報コミュニケーション技術(ICT)等のフィンランド大企業の市場参入が厳しい。ノキアは敵対的環境の日本の携帯電話市場から一時的に撤退した。中小企業の進出も困難で、販売拠点が主要な進出形態だ。素材、エネルギー、環境、ICTの技術部門の両国協力が有望で、特に第三市場への共同進出が期待される。米国西海岸企業の中国進出も、90年代は直接上海へ進出したが、今は高技術を有する日本企業との共同進出を検討している。第三市場進出のパートナーとしての日本の技術の役割が増大しており、アジア市場を狙うフィンランド企業の関心も高い。

懇談要旨

 

馬蹄和久阪和興業(株)取締役:日本に輸入するフィンランドの丸太価格は、中欧産に比べ高い。

グスタフソン大使:日本は製紙を中国経由で、木材は中欧から輸入している。フィンランド産丸太価格が高い理由は、巨額の補助金とロシア原木の輸入に高関税が課せられるためだ。大手企業も工場閉鎖に追い込まれ、国内木材生産は縮小している。

田丸周FEC常任参与:EU共通政策による補助金と思うが、競争相手はどこか。ノキアへの敵対的環境とは何か。

グスタフソン大使:EU加盟時期で補助金格差があり、ポーランドは労賃も安く有利だ。日本の携帯電話の規格は世界標準とは異なり、製造会社は15年前の15社から3社へ減った。最大手の世界シェアはノキアの38%に対し僅か3%。ノキアが開発中の次世代標準規格を日本が採用すれば、ノキアは日本へ進出可能となる。

都甲岳洋元駐ロシア大使:ロシア勤務時代、フィンランドは重要なライフラインと西側の窓口だった。日本とフィンランドは自然を愛でる芸術感性など共通の理解、規範を持ち、両国関係が深まる基盤だ。スウェーデン家具メーカーのイケアがロシアで活発に事業展開している。

グスタフソン大使:イケアは地産地消の戦略に優れており、ロシアで百万人以上の14都市で店舗展開し急成長した。最近は苦戦している。極東ロシアを東京担当としたフィンランド企業があり興味深い。

武居信男日蘭協会理事:両国居住者の内訳はどうか。学生の企業研修をできないか。

グスタフソン大使:在日フィンランド人は、ビジネスマン、日本人と結婚した女性、宣教師等約千人。フィンランドの日本人は、留学生、ICT企業関係者等で減少した。日本企業も非日本人が多い。EU計画で企業支援の学生交流を増加させたい。エリツィン時代、ロシアの若者が当国へ派遣され新鮮な経験と良い思い出を残した。

馬蹄和久阪和興業(株)取締役:金融危機に関して、フィンランドの東欧向け与信状況はどうか。

グスタフソン大使:フィンランドの銀行はラトビアの銀行株を保有しており間接的に影響された。フィンランドの輸出比率はGDP比40%と高く、輸出不振からGDPは昨年10%下落した。

木島輝夫元駐アルゼンチン大使:コイビスト大統領の89年の2回の訪日は日本人の心に残っている。両国企業の第三市場協力に関して、技術移転の問題をどう考えているか。

グスタフソン大使:フィンランド企業の戦略は、3Tの観点で研究開発拠点(ハブ)を設立し様々な企業を集積させることだ。ハイテク、タレント(良い大学)、トレランス(平等)のTだ。インドのムンバイは3Tに、資金とグローバル企業が加わり成長した。ハブを作り流れに乗る事が重要だ。日本企業の受容性は高く驚いた。安全保障輸出規制は当然順守する。

藤田弘道凸版印刷(株)相談役:教育水準が高い理由は何か。当社はインドでIT技術者を教育している。ノキア級のIT大企業が育っていれば、フィンランドでも研修可能となろう。

グスタフソン大使:戦後、対ソ賠償金負担もあり、貧国フィンランドは唯一「頭脳」に頼り巨額の教育投資を継続した。教員の地位向上と若者の教員志望の増加から教育水準が上昇した。学校は公立だけで競争を促進させ落ちこぼれを防いだ。日本の技術者のフィンランド研修を歓迎する企業は多いと思う。フィンランドの大学は日本の大学、研究機関との交流を希望している。

田丸周FEC常任参与:教育交流として、青山学院でグスタフソン大使に講演していただきたい。また、次回は大使公邸での2回目の懇談会を希望する。

グスタフソン大使:率直な意見交換でき嬉しく思う。講演と次回のアレンジ喜んでお受けしたい。

(田丸周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)

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