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バストル駐日オーストリア大使を招き第82回FEC日欧経済等フォーラムを開催

オーストリア 日欧文化経済委員会

2008年04月15日更新

FEC日欧文化経済委員会=チベット問題についても率直な意見交換を行なう

バストル駐日オーストリア大使

バストル駐日オーストリア大使

第82回FEC日欧経済等フォーラムで開会挨拶の埴岡FEC副理事長

第82回FEC日欧経済等フォーラムで開会挨拶の埴岡FEC副理事長

とき

平成20年(2008)4月15日(火) 11時45分〜13時45分

ところ

ホテルオークラ東京・本館5階「山里個室」

概要

バストル駐日オーストリア大使を招き第82回FEC日欧経済等フォーラムを開催

内容

FEC民間外交推進協会(斉藤邦彦理事長)は4月15日、バストル駐日オーストリア大使を招き、第82回日欧経済等フォーラムをホテルオークラ東京で開催した。懇談会には、FEC役員、法人会員、個人会員ら多数が出席した。
開会に際して埴岡副理事長が「先日FECの広報担当参与から大使に月刊FECニュースの取材を行った際の報告があった。その際に大使の博識と人柄に感銘を受けたとのこと。大使には実に丁寧、丁重に答えていただくなどその物腰にも感心したとのことで早く招きたいとのことで本日ゲストとして招待した」と主催者を代表して挨拶。出席者の紹介の後、バストル駐日オーストリア大使より、オーストリアの略史、経済情勢、対日関係などの基調講話があり、出席者と一問一答の昼食懇談会が和やかに行われた。

講演要旨

90年代初頭の、ドイツ統一、ソ連崩壊は、欧州の中心に位置するオーストリアにも激震だった。オーストリアは55年の永世中立宣言(「軍事同盟から中立」「駐留軍の排除」)で政治的自由を得たが、ソ連が中立宣言には経済的意味もあるとして、EEC入りをずっと認めなかった。漸く95年にEUに加盟、その後のEUの東方拡大が、オーストリア経済に好影響を与えている(英エコノミスト誌の特集記事を配布)。

EUの財政規律基準を遵守し、購買力4位、国際競争力8位、カントリーリスク6位等、ドイツを抜いたのが自慢。ドイツは統一で手間がかかったようだ。特に銀行(東欧でシェア6割)、保険、通信が好調。東欧市場の開放は貿易・投資の拡大により、オ経済の実質成長率に15年間で3.5%寄与した。人口は移民を含め年1.4%増加しているが、少子高齢化から年金改革が課題。無料の健康保険等北欧に近い高福祉の維持が難題だ。生産拠点として、政治・法の安定、インフラ整備、税制優遇等が魅力。研究開発投資の促進や教育の国際化も課題。中小企業の専門的且つ革新的技術は競争力がある。対日貿易は機械を中心に日本が赤字。年間約4百の楽団・歌手が日本で公演している。日オ修好140周年の来年、日オ交流年の各種イベントを実施したい。

懇談・意見交換

埴岡FEC副理事長:FECは89,90,91年にウイーン経由で東欧に多くの経済調査団を派遣し、貴国と東欧との関係の深さを実感した。今年はFEC経済調査団を貴国に派遣したい。

大使:FEC調査団の訪問は心から歓迎する。当大使館としては全面的に協力する。

野村全日空最高顧問:全日空はオーストリア航空と共同運航で協力中。日本の観光客増強に努力したい。

大使:日本便(週6便)の増便を希望する。ウイーン市長は日本贔屓だが、ユーロ高で日本の観光客は減っている。

田丸FEC参与: 90年代初頭に旧興銀で東欧拠点開設の検討をしたが、東欧各国に独銀への抵抗があり、オーストリアとの合弁銀行をウィーンに設立した。

渡邊森ビル特別顧問:ウイーンで活躍中の盲目ピアニスト梯剛之の音楽会を東京で開催し、収益金で全国の小学校へクラシックDVDを寄贈する計画を大使館の支援を仰ぎ進めている。

大使:小学生に古典音楽を教えるのは素晴らしい計画だ。

宮脇FEC理事:オーストリア製リフトは優秀で機械工具の水準の高さを実感した。日本人の印象を伺いたい。

大使:礼儀正しく皆と調和し、清潔。観光客として歓迎されている。

久米元駐独大使:オーストリア人はスイス人より友好的。ウイーンは京都とよく比較され類似性は極めて多い。EUの東方拡大による最近のオーストリア人の意識変化はどうか。

大使:最近の世論調査ではEU支持が激減し、EUへの思いは割れている。ユダヤ人補償問題等の戦後処理への知識も若者には必要だ。

米澤米澤化学社長:最近は「京都人」色薄まっているが誇りは高い。しかし商売は京都では無理で「東京で儲けて京都で遊ぶ」のが理想か。

法亢フジテレビ顧問:フジテレビで日オ・フォーラム(91年)、大相撲ウイーン場所の開催に携わったが、ウイーンは国際会議運営に手馴れており心地良かった。移民の受入れ状況はどうか。

大使:外国人比率は在留10%、国籍保有10%の計20%へ増加した。移民政策は強化され、地域毎に割当数が毎年見直されている。ウイーンの公立学校の生徒の殆どが外国人。移民は非熟練労働者が多く敵意も高まっている。

山田電源開発調査役:欧州、中東への出張にオーストリア航空が便利だが最近は予約が混んでいる。

本間本間獣医科医院院長:人畜共通の伝染病予防支援を国際的に展開しているが、人口密度の低い貴国は狂犬病も少ないようだ。

豊川東京LFEC幹事:外国人のもてなしが素晴らしい国と実感した。

大使:親心のように感じる日本人のホスピタィティは自国にはない気質。

渡邊:大国に挟まれながらも高い自尊心を持っている。教育の秘訣は何か。

大使:敗戦やドイツによる併合で国民の動揺は大きかったが、55年の国家条約でドイツに併合されないことが担保された。ドイツと距離を置くことで初めて小国オーストリアが昔の栄光に由来する自尊心を取り戻せた。

埴岡:聖火リレーが妨害されているが、北京五輪は開催可能なのか。

大使:チベット問題の基本は、51年の中国軍が占領時に、国際社会は反対せず中国の一部と認めた事実だ。EUは中国とダライラマとの交渉を提案しており、わEUの一員のわが国も支持する。中国は「内政干渉」と主張しようが。多くの国で同様の少数民族問題を抱えている。

野村:オーストリアはロシアとの関係をどう見るか。

大使:伝統的に悪くない。EU内でも対ロシア穏健派だ。エネルギー依存のほか、巨大市場はEUのメリットだ。

埴岡:改めて本席のFEC役員の日本とオーストリアとの交流実績に驚き敬意を表す。また、本日は大使のお人柄どおりの清々しい雰囲気の懇談会。今日は積残しの議題も多いので継続したいが、次回は是非大使館での開催はいかがか。

大使:是非FECの皆様をお招きして開催したい。

(田丸周FEC常任参与・(株)リケン常勤監査役・記)

 

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