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孔健チャイニーズドラゴン新聞編集主幹を招き第60回FEC中国問題研究会を開催=FEC日中文化経済委員会

中国 日中文化経済委員会

2010年01月21日更新

孔子流人間学とは? をテーマに開催

講演する孔健チャイニーズドラゴン新聞編集主幹

講演する孔健チャイニーズドラゴン新聞編集主幹

第60回FEC中国問題研究会の開催風景

第60回FEC中国問題研究会の開催風景

とき

平成22年(2010)1月21日(火)12時〜14時

ところ

帝国ホテル東京「北京」

概要

孔健チャイニーズドラゴン新聞編集主幹を講師に招き、第60回中国問題研究会を開催した。

内容

民間外交推進協会(FEC)・日中文化経済委員会(委員長生田正治(株)商船三井相談役)は1月21日、孔健チャイニーズドラゴン新聞編集主幹を招き、「孔子流人間学とは」をテーマに第60回中国問題研究会を帝国ホテル東京で開催した。研究会には、FEC日中文化経済委員長代行の谷野作太郎元駐中国大使、田中宏(株)クレハ取締役会長、岩下誠宏(株)ADEKA取締役名誉会長、齋藤宏(株)みずほコーポレート銀行取締役会長、尾崎護矢崎総業(株)顧問・元大蔵事務次官、渡邊五郎森ビル(株)特別顧問、伊藤直彦日本貨物鉄道(株)代表取締役会長ら、多数のFEC役員・会員が出席した。

開会に際してFEC副会長の田中宏(株)クレハ取締役会長より、「孔健先生は孔子直系の子孫で、日中両国で孔子思想の普及に努められている。著書では、日本人と中国人は同じ文字を使うが似て非なる人種。両国民とも相手より優越感を持つが、心の底では敵わないと思っている、と記述している。本日は中国理解を一層深めるべく、孔子の教えについて学びたい」と主催者代表の挨拶があった。続いて、孔講師より孔子思想、中国の若者の行動等について、白板を使用し、詳しい解説と率直な見解が述べられ、講演後中華料理をともにして出席者と一問一答の懇談が和やかに行われた。尚、出席者にはチャイニーズドラゴン紙と近著が配布された。

講演要旨

在日26年になるが、中国でも孔子思想の普及と日本文化の啓蒙に努めている。中国人の道徳心は低下し孔子批判も強い。論語は2千5百年前に書かれた、孔子と弟子達の対話録。政治はどうあるべきかについて、「食(食糧の確保)」「兵(軍備の充実)」「信(民の信頼)」が大事と孔子は弟子に説いた。教育が中国の最大課題だ。一人っ子政策の悪影響から、家では小皇帝扱いのわがままな若者が増え、大学の寮でも喧嘩が多い。親戚の概念が薄れ、米国社会のようになる懸念がある。若者の孔子批判を悲しく思う。勉強不足で、拝金主義が横行し事件も多い。官僚腐敗も増加し、胡錦濤主席は和諧社会をスローガンにあげた。明日から中国全土で大作映画「孔子」が上映されるが、胡錦濤の大号令で上映が決まった。

論語は五つの徳目を教えるが、「仁」「義」「礼」「知」「信」の順に重要。現代中国では仁の道徳が欠けている。仁は論語に最も頻繁に登場する、孔子思想の真髄だ。二人が並ぶと仁になり、重なると天になる。仁愛につながる。義は規則。孔子は「克己復礼」と言い、私情や私欲に打ち勝ち、社会の規範や礼儀にかなった行いを説いた。現在は義よりも利に走り、サッカー試合の裏取引もある。温首相夫人は宝石協会会長であり、胡主席の子息は北京五輪用検査機材を輸入した。「利によって行えば恨み多い」(論語)。3番目は礼儀の礼。知は学ぶことの重要さ。学生は試験目的だけに勉強する。共稼ぎ夫婦では夫が子育てに追われ勉強時間がない。信とは、国家と国民の間に信用、信頼がなくなったら、その国は必ず滅びる(「信なくば立たず」)ことの教えだ。日中間の「信」を強調したい。

昨年10月の日中韓首脳会談で、「新幹線(動車組)経済圏」構想が語られた。日本の新幹線技術を基盤にして、山東省、釜山、福岡、沖縄、台湾、福建省、北京を鉄道、トンネルで結ぶもの。「大東亜共栄圏」を連想させる、「東アジア共同体」は使いたくないが、中国、韓国、日本、台湾の儒教文化経済圏だ。山東省には日本より韓国企業が多く進出している。

「リーダーの風水学」は、名前に水が入らないと失脚すると予言する。習近平が次期主席と予想されるのも、対抗馬の李克強に水が入らないからだ。今後孔子ブームを迎えれば中国は改善する。中国人は左手に論語、右手に毛沢東と、心の中では毛沢東をまだ忘れていない。

懇談・質疑応答

マルクス(学)南山学園理事長:若者の孔子批判の背景は何か。

孔健講師:孔子の礼儀は厳格すぎる。米国流生活を望み、孔子は不要と思っている。

渡邊五郎森ビル(株)特別顧問:老子と荘子の思想をどのように表現し国民に伝えるのか。

孔健講師:老子は自由自在の思想で、無欲、無為に徹した生き方を説いた。一人っ子政策によるエゴイズムを戒める教えだ。80年代以降の世代が問題で、党幹部は子弟を国内汚染から守るため外国留学させている。

岩下誠宏(株)ADEKA取締役名誉会長:中国ビジネスで、「中国人は永遠に理解できない」場面を経験した。「儲け」は信頼がベースになる。

孔健講師:中国進出時には、トップが決定権をもつ「市長経済」「首長経済」の実態を理解すべきだ。日本人は論語を読まずに論語がわかる。「修身・斉家・治国」は、大事を目指すには身近な小さな事を為すよう努力せよ、と言っている。3人集まると、欧米では教会が建ち、中国人は中華街を作り、日本人は会社を作る。中国人は愛社心に欠け、皆社長になりたがり会社を分裂させる。一流企業には文化があるが、二流企業はブランド、三流企業は商品だけだ。中国の企業は短命。競争が激しく5年をメドに淘汰される。日本を学べと中国人に言っている。香辛料で人の違いがわかる。唐辛子の韓国人は手を出し、胡椒の中国人は手は出さないが裏がある。わさび好きの日本人は涙を出す。蒋介石が礼儀を移入した台湾の人は純粋ゆえに、国会で乱闘する。

谷野作太郎元駐中国大使:中国人は酒に泥酔しない。文学の最大テーマは中国では政治、日本は万葉集の恋歌と、吉川幸次郎氏が言っていた。

孔健講師:中国人は李白の詩歌を勉強し皆政治人間になるが、永田町の政治家は幼い。詩には枠があり言葉が凝縮されている。詩と礼を学べば成長する。中国の政治家は本音を言えず、必ず原稿を読む。

齋藤宏(株)みずほコーポレート銀行取締役会長:孔子と共産党政権の関係について、体制維持が必要な毛沢東時代は孔子を禁じ、市場経済化で矛盾が出始め、今再度孔子を持ち出したのではないか。日本の経済発展段階では、市場主義と儒教精神が概ね調和されてきた。

孔健講師:そのとおりで、改革時に孔子はいらず、社会安定に必要。自己否定の歴史だ。論語は、韓国ではストレートに受入れられる「雨どい」で、日本では「水割り」に似ている。中国は恥ずかしい話だが、批判されるほど孔子が必要だ。和の基本が孔子だ。

伊藤直彦日本貨物鉄道(株)代表取締役会長:孔子直系の家系図は存在するのか。

孔健講師:30年毎に家系図が更新される。今年は孔子生誕2561年。子孫は2百万人。直系の内孔が40世帯。韓国にも1万5千人いる。子孫は誕生前に命名され、自分は第75代直系子孫で本名は孔祥林。110代まで命名済みで111代からは孔子に戻る。子孫に高名な政治家はいない。自分も山東省から政界進出を打診されている。

谷野作太郎元駐中国大使:胡錦濤の次の第五世代が実権を握ったら、政治改革が起こるか。

孔健講師:中国人は心の中で皇帝に支配されないと混乱する。政治改革は絶対ないと思う。

サイバー攻撃されたグーグルは撤退検討へ追い込まれた。孫文の中国革命も最後に失敗した。始皇帝と毛沢東を超える人物はまだいない。

(田丸周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)

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