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金堅敏富士通総研経済研究所主席研究員を講師に招き第69回FEC中国問題研究会を開催=FEC日中文化経済委員会

中国 日中文化経済委員会

2010年06月09日更新

米中G2時代は到来するのかをテーマに講演

金堅敏富士通総研経済研究所主席研究員

金堅敏富士通総研経済研究所主席研究員

第69回FEC中国問題研究会の開催風景

第69回FEC中国問題研究会の開催風景

とき

平成22年(2010)6月9日(水)12時〜14時

ところ

帝国ホテル東京「北京」

概要

平成22年6月9日(水)に金堅敏富士通総研経済研究所主席研究員を講師に招き第69回FEC中国問題研究会を開催

内容

民間外交推進協会(FEC)・日中文化経済委員会(委員長・生田正治(株)商船三井最高顧問)は6月9日、富士通総研経済研究所主席研究員の金堅敏氏を招き、「米中G2時代は到来するのか」をテーマに第69回中国問題研究会を帝国ホテル東京で開催した。研究会には、田代圓東ソー取締役相談役、遠藤良治信越化学工業顧問、中嶋洋平日油代表取締役会長、内田勲横河電機代表取締役会長、神山茂ジャステック取締役会長らFEC役員、法人会員多数が出席した。

開会に際して生田正治日中文化経済委員会委員長・(株)商船三井最高顧問より「2020年代には中国経済がアメリカに追いつくと予測される中、今後日本の立場と米中G2時代の到来は我々の関心事項だ。今日はまさにその話をしていただけるので期待している」と主催者挨拶があった。金講師は講演資料に基づき、中国の台頭、米中関係の行方などについて講演を行なった。講演後、昼食をともにして出席者と一問一答の懇談が和やかに行われた。

講演要旨

中国は内部工業化によって台頭し、経済力の上昇も大きい。現行為替レートでは今年日本を超える。アメリカでは2040年〜50年にアメリカに並び、米中衝突の可能性が一番高いと予測している。また購買力平価でみると、2015年にはアメリカを越えると見られる。問題は中国の台頭がなぜこれほど早かったのかだ。中国は世界金融危機の度に急速に上昇してきた。アジア通貨危機によってアジア地域の大国になり、2008年の金融危機によってグローバルプレーヤーに成長した。中国共産党政権がうまく政治を行った面がある。

中国には経済社会発展の理念がある。鄧小平が打ち出した2050年までの理念「三歩走戦略」は経済的には既に実現している。ただし、社会保障、教育理念、失業率などの社会面では実現されていない。そのため胡錦濤政権は社会改革に取り組んでいる。またその後提唱された「新三歩走戦略」のうち、第一の経済目標は既に達成され、第二ステップもおそらく達成されるが、問題は2050年の第三ステップだ。ここには経済目標はなく、民主的、文明的で世界的に尊敬される近代的国家の実現が掲げられている。果たして中国が描いている国づくりは実現可能なのか、また平和的に台頭することはできるのか。中国台頭には政治社会問題、環境・労働問題、領土保全など国内の制約がある。外国からは中国のナショナリズムの台頭、アフリカ政策等自己中心的な資源外交、パワー移転による戦争危機が懸念されている。

これらの問題に中国はどのように対応するのか。2050年に向けて持続成長のための中国の戦略理念はたびたび変化している。毛沢東時代の理念は「平等論」、公平を優先し規制介入した。鄧小平時代は「先富論」。効率優先により経済は成長したが、格差、貧困問題が解決できなかった。胡錦濤政権は「和諧社会の実現」を目指している。この理念の変化には既存の政策の継続が改革に対する支持のコンセンサスを崩壊する背景がある。

対外的には「責任ある大国」として行動することを宣言。国内発展に専念することを基本的なスタンスとし、「核心利益」対外長期戦略をとる。中国にとっての核心利益である主権と領土以外の問題は譲歩するという考えだ。また、米国との共通利益の強化により衝突の回避を図り、東南アジア等周辺諸国と友好関係を築き、周辺諸国が豊かになる手助けをする「善隣」「富隣」政策をとっている。「和諧世界」を理念にして「平和的発展」をPRし、フォーラムとしてのG4、G8、G20等国際的フレームを活用している。

アメリカとの関係を見ると、アメリカで「中国台頭問題」が浮上したのは2003〜04年。中国の台頭に気づいて以降、アメリカは中国の経済政策に圧力を掛けた。当初、中国はアメリカに対抗する手段を持っていなかったが、06年以降中国がアメリカ国債を大きく持つようになると、アメリカも強い対応を取れなくなった。「中米国」という言葉が現れたのはまさにこの頃だ。しかし、昨年末からアメリカは中国政策を冷却。その背景にはアメリカ国内の貯蓄率が金融危機以後上昇し、アメリカ国民が国債を消化できるようになったことがある。今後の米中関係の課題は米中それぞれの核心利益だ。中国側の核心利益は領土問題と主権問題。主権問題のうち、人民元問題はいずれ譲られるのではないか。アメリカ側の核心利益は中近東問題、対テロ作戦、既存覇権、アジア太平洋地域での軍事的・経済的利益。

米中関係の位置づけは常にアメリカによって決められる。今の米中関係の大きな枠組は戦略的対話で、今年5月に北京で開催された「戦略経済対話」にはアメリカは史上最大の200名の訪中団を派遣した。この場でアメリカが中国に10万人の留学生を派遣すること、中国はそのうち1万人に奨学金を出すことが決まった。また、両政府とも世界の枠組としてのG2は否定した。

アメリカが中国と協力してフォーラムを開くのは、中国に国際的な責任、アメリカ覇権維持のコストを負わせる意図があるからだ。一方、中国側は2050年の目標を最優先に基本的には途上国の立場として維持し覇権を求めないこと、先頭に立たないことを堅持。

中国がアメリカと経済的に対等な関係になるかは中国の市場化に拠る。中国市場はアメリカの輸入市場の6、7割だが、これが10割近くなればこのマーケットパワーは非常に大きく、その時はじめて平等なパートナーになれるのではないか。結論として規範として機能するG2は見込めないが、フォーラムとしては既に機能している。

懇談・質疑応答

田代圓東ソー(株)取締役相談役:中国の成長を支えているベースは何か。デモクラシー概念と中国の成長を支えているシステムのコンフィクトは無いのか。

金堅敏講師:中国の成長の源泉は国内政策の自由化あるいはグローバル化、労働力の豊富さ、農村の都市化による経済の効率化、国営企業改革等の経済自体の効率化、消費需要の潜在性だ。2025年までは7%成長は見込める。それ以降は技術力のある国になるかだ。

生田正治(株)商船三井最高顧問:国民一人当たりのGDPなど経済のクオリティの問題において中国はアメリカや日本を目標とはしないのか。

金堅敏講師:胡錦濤政権はクオリティも追及している。一人あたりのGDPが2年前に提起された。また経済だけでなく教育社会福祉の発展、自然との調和、自然エネルギー社会、環境保護にも非常に力を入れ、経済だけでなく社会クオリティも追及している。

山田洋暉(株)クラレ監査役:2012年に新しいリーダーに替わるが、年々強化される軍を本当にコントロールできるのか。

金堅敏講師:中国では共産党が軍をコントロールしている。その党をコントロールするのが人的なのか制度的なのかが非常に大きな問題。平和的に権力移譲が行われるかは国内外の関心事。党が乱れた時に軍も乱れる。毛沢東以降混乱が起きたことはない。

山田洋暉(株)クラレ監査役:中国のGNPがアメリカに並ぶ時、軍事危機が起きるのではないか。

金堅敏講師:アメリカのグローバルセキュリティ理論は力の差がありパワーバランスが取れている時は問題ないが、台頭してくるときが最も危険という考え。そのためアメリカは中国を平和的に台頭させる、あるいはアメリカの枠組みに入れようとしている。

生田正治(株)商船三井最高顧問:格差は解消できるか。

金堅敏講師:今までは沿岸部と内陸部の格差に着目していたが、現在は都市内部の格差に取り組んでいる。併せて各種格差の問題の解決にも取り組んでいる。

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