HOME >  01校正用カテゴリー  > 佐藤元信ベトナム三井物産㈲社長を招き第45回ベトナム問題研究会を開催=FEC日越文化経済委員会

佐藤元信ベトナム三井物産㈲社長を招き第45回ベトナム問題研究会を開催=FEC日越文化経済委員会

ベトナム投資環境の現状と課題をテーマに講演

写真
佐藤元信ベトナム三井物産㈲社長
写真
第45回FECベトナム問題研究会の開催風景

と き

平成22年(2010)10月14日(木)12時〜14時

ところ

帝国ホテル東京・タワー館地下1階「北京」

内 容

 FEC日越文化経済委員会は10月14日、佐藤元信三井物産㈱執行役員・ベトナム三井物産(有)社長を帝国ホテル東京に招き、「ベトナム投資環境の現状と課題」をテーマに第45回ベトナム問題研究会・昼食会を開催した。開会に際して司会の織田幾太郞参与は「三井物産がアジア地域戦略の重点地域と位置付けたベトナムの三井物産社長に2008年に就任され、本年からは三井物産㈱執行役員を兼務。本日は豊富な経験と知識を下に熱き思いの一端を現地代表としてお話しいただけるものと期待している。」と佐藤元信講師を紹介。続いて、主催者を代表し湯下博之FEC日越文化経済委員会委員長代行・元駐ベトナム大使より「外国投資をするとなれば相手のことを本当に良く知らなくてはならない。特にベトナムの様に急成長している国は、流動的で一年前の情報で計画を立てては大きな見込違いを起こす。今後の展開を常に見て行かなくてはならない。それを踏まえて共に歩くという姿勢で臨むことが肝要。本日、正にその内容に最適任の佐藤社長をお招き出来たことは大変有りがたく、講演を楽しみにしている。」と挨拶があった。佐藤講師は、現在統計に表れている数字で見たベトナム(客観的なベトナム)と、私見も含め現場で見聞きした実感(主観的なベトナム)の二部に分けて配布資料に基づき講演した。その後、中華料理を共に出席者と活発な質疑応答と意見交換が行われた。研究会には、湯下博之元駐ベトナム大使、田中宏㈱クレハ相談役、渡邊五郎森ビル(株)特別顧問、岡崎真雄あいおいニッセイ同和損害保険㈱特別顧問、市田行則日本原子力発電㈱相談役、後藤舜吉チッソ㈱代表取締役会長、米澤泰治米澤化学㈱代表取締役社長、古賀あや㈱新開トランスポートシステムズ代表取締役会長、和田眞治日本瓦斯㈱代表取締役社長ら多数のFEC役員・会員が出席した。

講演要旨

 アジアのGDPベース経済規模は、世界経済の25%、2050年には50%。ベトナムもインド、中国と並び高成長している。GDP予測は年初6.2%、中間6.7%、見直し7.2%。要因は、輸出の回復、個人消費の拡大、海外からの直接投資の増加。但し、総額は1,031億ドルでまだまだ小さい。中国の52分の1(中国は5兆3,694億ドル)で、伸びはしているが、満足できる規模でない。総体のGDPは大きいが実態のベトナムの存在感は小さい。
 ベトナムへの投資状況は、日本は累計認可額ベースで2位、累計実行額では1位。中越戦争の経験から中国の投資は極めて少ない。近年は投資の地図が変わってきている。2009年度は米国が1位(不動産・サービス)。今まで日本は、台湾、韓国、マレーシア、シンガポールのアジアの中での競争だったが、欧米が急速に参画して来ている。ベトナムは外交・防衛上米国を歓迎している。その他各国も注目し進出し始めているが、未だ満足できる規模には至っていない。
 日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)、日本ベトナム経済連携協定(JVEPA)、或いは日越共同イニシアティブによって貿易・投資環境は整いつつあるも、本格活用はこれから。現状課題は多く、まだ投資環境、外交上の目的による進出はないが、安価な労働力のみを求めてベトナムへの進出が急増している。ハノイで350社、中間地点で50社、ホーチミンで450社の約1000社の商工会の登録が有り、毎年増えている。日越共同イニシアティブは2003年から官民一体となってベトナム政府と改善の交渉を行い“遅々として進んでいる”。
 日本企業がベトナムを選ぶ主な要因は安い労働力。続いて、労働争議が多く、政治リスクが高い中国一極集中からの回避。アジア進出の契機となった中国は人件費が高騰しており、一方のベトナムは近くて安く、その上労働力の質は良く且つ親日的。結果として、安価な労働力と成長地域を求めて中国からの移転が増え、消去法でベトナムを選んでいる。ベトナムが持つ投資先としての魅力は、安定した政治体制による安全な社会、日本との高い類似性、良質で豊富な労働力と比較的低い労働コスト、そして比較的少ない労働争議。最近は、労働争議を先導し賃金を上げて増額分から報酬を得ている労働争議屋が出てきたが、中国に比べればまだまだ少ない。大体ワーカーは100ドル、中間管理職で500ドルから2000ドル位だが、離職率が非常に高い。
 ベトナムには、インフラの未整備、中間管理職の不足、社会的システム(贈収賄)の未整備、部品産業が未成熟、法規制の未整備、南北問題、限定的な資源など課題が多く、進出は簡単ではないが、安く良質な労働力が魅力。私見では贈収賄は互助のシステムになっているので無くならない。北部と南部は戦争を経ているので、融合できず2つの国として対応した方がよい。
 ベトナムは多くの人口を擁し、大陸に位置し、政治も安定しており、現状では競争力のある労賃だ。将来ある一定の経済規模にはなる。2030年〜35年には現在のタイ国程度の経済水準に達するだろう。そこから更にどのように発展するのか注目している。車社会への完全移行(2025年頃に)、政治体制の変革(共産党の一党独裁のまま)、中国との関係変化など更なる成長には大きな変革が必要ではないだろうか。
 投資の際に行うべきことは、投資目的の明確化、分野の選定、分野別のタイミングと時間軸の決定、日本とベトナムの外交への注意、ベトナムに対する貢献などで、ベトナムの成長が日本の成長と思えることが必要。
 ベトナム人はお金は高きから低きに流れると考えており、強者が弱者に施すことは当たり前、特にそれが広義の家族(血縁、地縁、その他類以の関係)であれば当然と考える。また、借金も当然のことと考える。国家も国民も借金をしているが果たして返済されるものなのか疑問だ。
 ベトナムを最重要国と位置付けるのであれば、他の途上国と違った特別な支援が必要。そのためには、民間が進出する際の官による支援や、民間による日本外交の支援など官民一体となったベトナム進出の推進が望ましい。また、進出企業が10年後20年後もベトナムで事業を実施するのであれば、日本語教育等日本コンテンツの導入を前提に図書館、小学校、職業訓練学校の建設など、地域での教育の支援が重要。例えば、各省に一つ日本小学校を設立。塾や国公立大学の分校の設立など進出企業による共同教育プロジェクトの実施が最も効果的であり進出企業が寄付金を募り実現してもらいたい。ベトナムを育てることは日本を育てることと同じという思いを持って欲しい。
 

懇談・質疑応答

川越英二㈱きんでん取締役常務執行役員・国際事業本部長:きんでんベトナムは300人の従業員がいるが、ハノイとホーチミンの人はうまく行かない。良い方法はないか。
佐藤元信講師:ハノイとホーチミンは相容れない。二つの国と思ってオペレーションをした方が判りやすい。世代交代して40年から100年程経つと一つになれるかもしれない。
後藤舜吉チッソ㈱代表取締役会長:送電線はハノイからホーチミンまでつながっているのか。
佐藤元信講師:つながってはいるが、盗電率が高い上、漏電も多い。必要電力の60〜70%しか供給されておらず、電力は圧倒的に不足している。
渡邊五郎森ビル㈱特別顧問・元三井物産副社長:為替の変更はあるか。
佐藤元信講師:二重為替でドルペッグ制。ドルを中心にしてドンを少し安くした設定で、市内ではドルもドンも両方使える。但し、政府が毎年少しずつレートを下げている。原因は輸入超過と投機好きで、世界一金を買う国民性のためだ。
市田行則日本原子力発電㈱相談役・前会長:法整備の状況はどうか。企業会計は透明性があるのか。
佐藤元信講師:法律は未整備で、企業会計も不透明。ほとんどが見なし処理で、都合のいい方に解釈していく。
水沼正剛電源開発㈱取締役:政治の季節が近づいて来たが、現在の状況はどうか。また、国営企業と国営企業以外と事業をやる場合のそれぞれの留意点は何か。
佐藤元信講師:来年1月に開催される党大会に向けて動きがある。ズン首相は留任して、他の人は交代と言われているが、実際にはよくわからない。国営企業とのタイアップは大変難しい。私の経験では組まない方が良い。彼らはコンセンサス方式を採用しており決定まで非常に時間が掛かるため、我々はやめるように勧めている。
田中宏㈱クレハ相談役・前会長:労働争議屋なるものがいると初めて聞いたが、どういう類のものか。山猫ストのような違法なストの対策はどうなっているのか。
佐藤元信講師:労働組合を作らなくてはならないので労働組合費を集めるが、労働争議をやれば賃金が上がるという知恵をつけた者が、争議屋として各地を廻って労働争議を起こさせる。山猫ストは人民委員会が管理しているので、大きな問題にはなっていないが、ストは感染していくので拡がることがある。地域によって給料に格差があるので、しっかりと調査した方がよい。
市田行信日本原子力発電㈱相談役・前会長:インフラ整備について、今までのペースと同じでしか進まないのか。
佐藤元信講師:今までもいろいろな枠組みで様々な改善プロジェクトが有ったが、道路と橋はなかなか進まない。
田中宏㈱クレハ相談役・前会長:ハノイに行った時、空港から市内に入る道路沿いに高級マンションが建っていたので、ガイドに聞いたところ、日本人もいるがベトナム人でマンションに入居できるのは、会社の社長と交通警察の幹部と大学教授だと聞いた。交通警察の幹部はほとんどが賄賂をもらうためとのことであったが本当か。
佐藤元信講師:交通警察への賄賂は間違いなくある。中には大銭もあるがそれは皆で分けるようだ。私が見る限り、賄賂ではなく互助システムとなっている。
湯下博之元駐ベトナム大使:アジア的な互助システムと賄賂とを明確に区別できないのか。
佐藤元信講師:線引きが難しい。日本人はお中元やお歳暮程度のことは良いと考えるが、欧米人は全て否定してしまう。何かとアジア的な互助システムはある方がよいと考える。
渡邊五郎森ビル㈱特別顧問・元三井物産副社長:ベトナム人は非常に強かな人が多いと聞くが、具体的にはどのような人か。
佐藤元信講師:ベトナム人は当社の社員から首相まで全員が強かだ。大陸の中で暮らしてきた国民性だろう。島国気質の日本人は太刀打ちできない。

ベトナム問題研究会に戻る

更新日: 2010年10月14日