![]() ジャーナリスト・作家の莫邦富氏 |
![]() 第78回FEC中国問題研究会の開催風景 |
と き
平成22年(2010)12月1日(水)12時〜14時
ところ
帝国ホテル東京・タワー館地下1階「北京」
内 容
民間外交推進協会(FEC)・日中文化経済委員会(委員長・生田正治㈱商船三井最高顧問)は12月1日、ジャーナリスト、作家として幅広い分野で活躍している莫邦富氏を招き、「訪日中国人観光客倍増に向けての日中国民交流促進における課題」をテーマに第78回中国問題研究会を帝国ホテル東京で開催した。今年の中国からの訪日客は10月累計で既に昨年の年間合計を上回る128万人。日本政府は「観光立国」を目指し中国人海外渡航者の1割の獲得を目標としている。研究会には、生田正治㈱商船三井最高顧問、田代圓東ソー㈱相談役、渡邊五郎森ビル㈱特別顧問、中嶋洋平日油㈱代表取締役会長、神山茂㈱ジャステック取締役会長、山口範雄味の素㈱代表取締役会長、白川進東京電力㈱顧問らFEC役員、法人会員多数が出席した。
開会に際してFEC日中文化経済委員長の生田正治㈱商船三井最高顧問より、「2007年の訪日観光客は835万人で、うち韓国人が260万人、台湾人が139万人、中国人は94万人だった。中国人観光客に関しては査証発給手続きの簡素化、所得制限の緩和により今後10倍に発展してもおかしくない。本日は観光業に精通している莫講師の講演を楽しみにしている」と主催者挨拶があった。莫講師は自身の経験に基づき日本の観光業の現状と課題について配布資料に沿って詳細に述べ、講演後は昼食懇談会形式で出席者と一問一答の質疑応答を活発に行った。
講演要旨
日本の観光業は外国人観光客を受け入れる発想を持たず日本人の海外旅行をサポートする産業として成り立っており、現在の市場ニーズと観光業の狙いの合っていない点が多々あるようだ。
観光庁のデータによると2008年の旅行消費額は23.6兆円。物流業や金属製品、石油・石炭、鉄鋼業に相当する立派な産業だ。しかし、観光先進国と比べるとどうか。各国のGDPに占める観光業のシェアは、スペイン11%、オーストリア6.4%、スイス5.1%。日本と同等の経済規模のフランス、イギリス、ドイツはそれぞれ3%台。アメリカでも2.6%。それに対し、日本はわずか1.9%に過ぎず、観光業は伸びしろが多分にある。地方では少子高齢化問題が深刻化しているが、定住人口1人分の国内消費の減少は外国人旅行者7人分の消費で下支えできる。この点からも努力する価値があるだろう。
日本政府が定めた外国人誘致計画は、当初2020年までに1900万人を目標としていたが、現在は2500万人、可能であれば3000万人に修正されている。目標数の3分の1以上は中国人旅行者を想定している。2008年に中国を訪れた日本人観光客は340万人、一方、日本へ来た中国人旅行者は100万人のみ。11月に安徽省の観光当局を訪れたところ、海外旅行希望者は多いが直行便やチャーター便が無いことに加え、査証申請を上海の旅行会社の仲介で行っているため滞ってしまうとのことだった。また、中国人観光客は訪日旅行者の中で消費額が最も高いが、滞在中に所持金の約3分の1しか消費していないという調査結果がある。その原因は買い物時間と外国向仕様の不足だ。これらの面の改善は観光客を誘致する力になるだろう。
では、どのように中国人観光客の心を掴むか。日本人は北京、上海、広州等中国の大都市ばかりに意識が向くが、安徽省の例のように地方にも消費力はあり市場を掘り起こすと良いだろう。また、日本では有名な観光地も海外では知名度が低いため東京・大阪がゴールデンルートになってしまう。海外での情報発信を積極的に行い地方にも外国人旅行者の恩恵がまわるようにするべきだ。外国語による良質な観光情報の積極的な発信やアピールの方法等の改善も必要だろう。
懇談・質疑応答
田代圓東ソー㈱相談役:中国人観光客にとって日本の魅力とは何か。
莫邦富講師:食事、サービスの良さが魅力。また、アジアの先進国、日本を見たいというライバル意識もある。実際に日本を訪れて様々な点を比較し、特に日本の清潔さ、礼儀正さ、サービスの良さに感銘を受けている。
山口範雄味の素㈱代表取締役会長:日本人の海外旅行は観光地を一ヶ所でも多く廻るスタイルから最近は滞在型に移りつつあるが、中国人はどうか。また、中国人観光客はテーマを持って観光するのか。
莫邦富講師:ほとんどの中国人旅行者は前者。夫々観光のテーマや目的を持っているが、そこには観光や人生の楽しみ方への意識の差、経済格差が表れる。
水沼正剛電源開発㈱取締役:中国では等身大の日本の歴史を学べないと思うが、その国の歴史を知らなければ旅行の本当の面白さがない。日本観光のリピーターが増えると限界が来るのではないか。
莫邦富講師:しばらくは大きな課題になるだろう。以前、金閣寺を案内した時に建築様式等に見られる日本文化に溶け込んだ中国文化の説明をしたところ、見学時間が通常の倍になった。つまり歴史をどの様に料理して見せるかがポイントだ。
中嶋洋平日油㈱代表取締役会長:中国人観光客の年齢層に偏りはあるか。
莫邦富講師:若い世代が多い。中国は近年ようやく豊かになった国であり高齢者は貧しく、若い世代が裕福という特殊な事情のためだ。
生田正治㈱商船三井最高顧問:中国人が日本観光の際に困る点は何か。
莫邦富講師:改善されつつあるがテレビの中国語放送が無い点。クレジットカードの使用可能範囲が狭い点。地方の観光地としての情報発信が不十分で互いのニーズに応えられていない点。
渡邊五郎森ビル㈱特別顧問:観光立国を目指す日本に現実性のある提案をお願いしたい。
莫邦富講師:もっとテーマ性を持つこと。中国には都市部の来るべき少子高齢問題に備え市民大学づくり等の計画があり、日本は提携し協力することができる。また修学旅行の受け入れや留学制度の整備など学生を招く工夫も必要。先日、山口県宇部市を訪ねたが、炭鉱の町の再生は中国も抱えている問題。同じ課題を持つ都市が集まり議論することで学び合える部分もある。また、日本は中国人観光客に買い物ばかりさせているが、それでは日本製品が中国でも購入できるようになった時、観光客は日本に来る必要がなくなってしまう。まずは観光に力を入れるべきだろう。





