「中東エネルギー事情と日本の関係」…最首公司日本アラブ協会理事を招き
FEC日中東文化経済委員会(委員長・小長啓一AOCホールディングス(株)相談役)は8月31日、最首公司日本アラブ協会理事を招き第12回FEC中東問題研究会を東京・全日空ホテルで開催した。
開会に際して、日中東文化経済委員長代行の片倉邦雄元駐イラク、エジプト大使が、「原油高の源流には地政学的要素が大きい。最首先生はベテランのエネルギー・ジャーナリストで中東情勢を内側からみることのできる人」と主催者挨拶。最首公司日本アラブ協会理事より、「中東のエネルギー事情と日本との関係」をテーマに、エネルギー資源、宗教事情、日本の役割などについて率直な見解が述べられた。研究会にはFEC役員・会員が多数参加し、講演後活発な議論が交わされた。
![]() 最首公司氏を迎えて第19回中東問題研究会=東京全日空ホテルで |
【講演要旨】
米政府は原油の実質価格を200ドル/バレル以上と見ている。名目価格(70ドル/バレル)に安全保障費として、イラク戦費(160ドル/バレル相当)を加算した概念だ。ブッシュ大統領は06年の一般教書で、25年までに中東石油輸入依存度を75%から25%へ削減し、原子力とバイオマスを柱にするという、「脱石油」を宣言した。
石油・天然ガスの埋蔵量はイスラム圏に偏在しコストも安い。キリスト教圏の埋蔵量は少なくコスト高だ。また、キリスト教の「政教分離、未来期待」に対して、イスラム教は「政教一致、過去理想(イスラム原理主義)」だ。イスラム体制は19世紀に西欧が侵略、植民地化された。大戦後イスラム圏のナショナリスト、スカルノ、ナセル、シャー、アラファトらが独立運動を主導し政権を獲得したが、中東ではイスラエルと戦うたびに国軍が敗れ、和平協定締結に至る。20世紀の戦争は朝鮮戦争、タラ戦争を除き石油争奪戦であった。石油の公正な配分があったら戦争は回避されたと思う。ロシア、中国はイラク油田の利権をイラク開戦前に獲得していたが、米英は取り損ない強硬策をとった。
こうした中で、イスラエルと果敢に戦うハマス(パレスチナ)、ヒズボラ(レバノン)らの民兵への共感、支援が増えている。ヒズボラに対する国連の武装解除決議をアラブ大衆は認めないのではないか。レバノン国軍にヒズボラが入る懸念もあり、サウジ政府も急遽レバノン支援に軌道修正した。
中東の震源地パレスチナ、イスラエル、ヨルダンは水不足問題を抱えている。日本の役割として、「死海発電・淡水化プロジェクト」を提言したい。海水を淡水化し、海面差(400m)を利用した水力発電計画だ。淡水化にはEU、日本の太陽発電技術や脱塩技術が使える。
21世紀後半は原子力の時代になろう。米ロは核エネルギーの覇権獲得に動き出している。日本がエネルギー自給率(4%)を上げるには、原子力発電比率の引き上げが不可欠で、再処理事業が国際管理化される前に核燃料サイクルを確立する必要がある。日本には純粋プルトニウムの製造能力があり、自給率を高めるまで憲法改正すべきでなかろう。
【懇談・質疑応答】
最首 原油高の行方は、先物市場がリスク次第で大きく変動する。先物市場の存在意義を再考すべきではないか。
佐竹 石油需給はバランスしているが、地政学要因があり価格の先行きは不透明だ。イラン制裁あれば一層の高騰もあろう。米国に石油先物市場があり、国内製油所の事故が即座に国際価格へ波及する。
上原 イスラム・スンニ派とシーア派の勢力関係はいかに。
最首 イランは9割シーア派、イラクは拮抗しているがクルド族も入りもめている。シーア派はバハレーン、サウジ、クウエートなど産油地帯にも多い。
片倉 シーア派主導のイラク政権とハマス、ヒズボラが反米・イスラエルで共同戦線を組むと厄介だ。
最首 欧米も危険視している。ハマスの先にはムスリム同朋団(エジプト)がいる。サウジでは宗派対立をなくすべく、イスラム圏統一の小学校教科書作り構想がある。
田丸 イスラエル・ヒズボラ戦闘で、イスラエルの不戦神話が崩れた。イスラエルの反撃の懸念はないか?
最首 最右翼のエタニエフが政権をとれば強硬策にでる可能性もあるが、米国はイスラエルの戦法を批判しており、国際世論次第か。
渡邊 サウジのロイヤル・ファミリーをアラブの人はどう見ているか。
片倉 サウード王家は中部の小勢力部族出身だが結束は固い。
最首 部族間対立をイスラム教で牽制しており、反政府行動は反イスラム行為として罰せられる。サウード家は石油メジャーよりもブッシュ大統領と緊密な関係だ。
(田丸周FEC常任参与・(株)リケン常勤監査役による司会進行と記事)






